栗山 僕も本当に同感で、野球の下手だった人間が未だに野球をやれているのは、出逢いしかなかったなと思います。WBCの監督に選ばれたことも、日本代表が世界一を獲得できたことも、いろんな人との出逢い、ご縁が実っていった結果に他なりません。
「運」を拓いていくために
横田南嶺氏が心に決めたこと
横田 いろいろな人を目の前に見て、その声を聞くというのは大事なことですね。
栗山 それがあるとないとでは全然違いますよね。
横田 清水寺に大西良慶(りょうけい)という立派な方がおりましてね。108歳くらいまで長生きをした人ですけれど、一遍この人に会ってみたいと思いながら、生前はお会いすることが叶いませんでした。そのときに思いました。これからはあとにしようということはやめようと。もし出逢いの機会があれば、必ずそのときに会っておこうと思うようになりました。
栗山 本当にそうですね。
横田 そういう自分にはないものを持っている人に会うというのは、やっぱり人生の一番の楽しみですよね。
栗山 僕がすごくラッキーだったのは、自分がダメな選手だったので、どんな人に会っても僕よりうまく見えるんですよ。だから、上から目線で人に会うことはほとんどなかったです。とにかく教えてくださいという感じで誰とでも会っていました。それがよかったと思うんです。おそらく皆さん、「こいつをなんとかしてやろう」と思ってくださったのではないかと。
縁を生かすことができる人には
人との接し方にも特徴がある
横田 こうして対談をして思いますのは、栗山監督が実に謙虚で素直でいらっしゃるということです。謙虚・素直こそ縁を生かし、出逢いを真の出逢いにするための要訣(ようけつ)なのでしょうね。
栗山 ただ、僕自身は謙虚にならなきゃいけない、素直にならなきゃいけないという気負いもなくて、自然にそういう姿勢で人と接してきたように思います。それしかできなかったんですけれど、今振り返ってみると、それがプラスになったのかなと感じます。