外向的な人のほうが
外国語学習に成功しやすい?

 外向的な人のほうが外国語学習に成功するということも、直感的にはありそうなことです。外向的な人は内向的な人に比べて会話の機会が増えると思われるからです。

 ただし、日常言語能力と認知学習言語能力の区別を考えると、自然にコミュニケートする能力(日常言語能力)は外向性と相関するが、筆記テストで測るような外国語能力(認知学習言語能力)は内向的な人のほうが高いだろう、という仮説も立てられます。

 内向性は外国語とは関係ない学業成績全般と相関がある、ともいわれていたので、この仮説には一定の信憑性がありました。

 研究の結果をみると、外向性が日常言語能力と相関する、という傾向は多くの研究によって支持されましたが、内向性が認知学習言語能力と相関する、という仮説のほうは実証データによって支持されませんでした。よって、外向性のメリットはあるが、内向性はあまり関係がない、といえるでしょう。

 ただし、日本人の英語学習者に対して行われた研究では、外向性と日常言語能力の相関さえなかったそうです。その研究が行われた1980年ころは日本ではあまり会話練習が行われていなかったと思われることを考慮すればこれも納得のいくことで、そのために、外向性のメリットがあまりなかったのでしょう。

 実際、ある研究では、質問紙によって測られた外向性よりも、研究者が教室で観察した「外向的行動」のほうが、日常言語能力とより強い相関を示しています。

 つまり、外向的という性格そのものよりも、「外国語で会話をする」ことを含む外向的行動を実際にすることが、大事だということです。外向的な人でも会話練習のない授業では、外向性を生かすことはできません。

外国語を話すときは
自分を解放する必要あり

 外国語を学び、それを話す、という行為は、ある意味では新しい人格を身にまとうことである、と言ってもいいかもしれません。

 母語で話しているときはなんでも自由に言いたいことを言えるのに、第二言語ではそうはいかず、ときには頭が悪いように見えるかもしれない。

 つまり、いつもと違う自分になる必要があるのです。そのため、外国語を話すときは、ある程度自分を解放して、新しい自己を人に見せることになり、ちょっと慣れるまでは、かなり気恥ずかしいものです。