とにかく働きまくる毎日だが、不思議とストレスはないそうだ。なぜなら、近くに自然があるから。集中力を要するハード作業の後は、脳を休めるために森へ行く。

自然に触れることで
ハードワークに耐えられる

 また、複数の仕事を同時にこなすため、朝の時間を有効に使う。

 夜が明けてまだ外が静かなうちに、大切な仕事や、創造性を必要とする仕事を片づける。簡単な朝食を済ませたら、犬と近くの森を散歩する。

「月に最低20時間は自然の中で過ごす」という彼は、ハイキングをしたり、写真を撮ったりするのが趣味だ。もう少し余裕が生まれたら、オフロードのバイクも始めたいと語る。

 セルフリアリゼーション・フェローシップというスピリチュアルコミュニティにも所属している彼にとって、自然の中で過ごす時間は、自分がこの世界でどんな貢献ができるのかを内省する時間でもある。

 1日1回の瞑想も欠かせない。

 瞑想は集中力やエネルギーを高め、忙しい1日に平和をもたらしてくれる。質の高い睡眠を得るのにも役立っているそうだ。

 離婚を経験し、愛犬と暮らす彼はいま、ひとりの時間を気兼ねなく持てている。

「モーニング・ページ」というジャーナルをつけたり、読書、ドキュメンタリー鑑賞、モーターサイクルに乗ったりする時間の中で、仕事の疲れから回復し、さらにエネルギーやインスピレーションを得ている。

テクノロジーの発展で
山奥でも人間関係を維持できる

「ひとりで暮らしていても、寂しくない」

 都会から山奥に移り住み、人と交わる機会も激減した。それでいいのか、という指摘はもっともだ。

 だが、ひとりで暮らしていても、まったく孤独な気持ちにはならない。

 テクノロジーのおかげで、仕事仲間とはオンラインでつながれる。また、地元のコミュニティでボランティア活動を通して、地域の人たちとの交流も増えた。

 なにより、「自分の使命」を果たすために活動していれば、寂しさを感じる余裕はないという。

 アンドリューは「世界をより良い場所として、後の世代に残す」というライフミッションに従い、いくつもの仕事を掛け持ちしているので、充実感はあっても、疲れは感じない。そんな彼を見て、「孤独な人」と揶揄する者がどこにいるだろうか。

 先述したエンジンの製品化を果たしたら、余生は家族や親しい友人たちとリラックスして、ゆっくり過ごしたいと思っている。

「あと5年はかかるかな」とはにかむアンドリューの表情からは充実感が漂っていた。