お客様の要望に応えて少しずつメニューを増やすこともあれば、雪が積もると、山道を運転できない住民の自宅まで商品を配送する。レストランが片手で数えるほどしかない小さな山の中では、彼のパン屋は住民にとってなくてはならない存在だ。
みんなが彼の焼くパンを楽しみにしている。そして、みんなに喜んでもらっているジョージも、イキガイを感じている。
もちろん、頑張れば頑張るほど、金銭的な報酬は付いて回る。ようやく最近は生活が安定してきたという。
チャンスが巡ってきたときに、ジョージが躊躇せず行動に移せたのは、その日のためにしっかり貯金をしていたことも大きい。
将来夢を叶えるために、割り切って、資金作りに励む時期も長い人生において必要なのだ。
田舎暮らしの“不便さ”が
メンタルに好影響を与える!?
仕事のかたわら、自然に触れている人たちの話を聞いていて気づいたのは、彼らがストレスを敵視していないということだ。
都会で暮らすように物がすぐに手に入れられるわけではないし、どこに行くにもアクセスが悪い。冬になれば雪で閉じ込められるし、天候も読めない。とにかく不便な環境下で過ごさなければならない。
当然、ストレスを感じてもおかしくないのだが、彼らはその悪環境を楽しんでいるようにさえ見える。「自分がやりたくないこと」をさせられるときには、耐え難いストレスを感じるが、自ら選び、意味をもってしていることに対するストレスは、むしろ歓迎しているくらいだ。
そもそも、ストレスは決してネガティブな側面ばかりではない。

適度なストレスは認識力やメンタルヘルスの向上に寄与することは、数々のリサーチ結果からも明らかになっている。
また、一度ストレスを受け入れていると脳に好影響を与える。記憶を司る海馬に、「ストレスを克服した」という良いストーリーが作られ、肯定的なドーパミン、やる気を出す神経伝達物質が分泌される。
その意味では、何でも満たされる生活は、何も生み出さない環境だとも言えるのだ。