自然の中では五感すべてを使用し、注意が分散された状態になる。矛盾するようだが、そんなぼんやりとした状態での注意(「選択性注意」と呼ぶ)が、集中力を取り戻すのに効果的なのだ。

 自然の風景を眺めていると、日常の煩わしさから解放される。

 また、自然の中を歩くとき、自然とマインドフルネスにもなりやすい。

 頬に当たる風を意識して感じ、樹木の間に差し込む日光のキラキラとした輝きを見つめ、呼吸をしながら身体の感覚に意識を向けるとき、日常の煩わしいことへの思いや、否定的な自分との会話から解放される。

休憩時間になったら
あえて「ぼんやり」過ごす

 こうした開放感は、脳が「デフォルトモード・ネットワーク」に切り替わった証拠だ。

 デフォルトモード・ネットワークは、ワシントン大学の神経学者マーカス・レイクルの論文で知られるようになった。安静時にもかかわらず活動を示す脳領域の存在が複数証明されたのだ。

 ぼんやりとした状態でも、仕事や勉強をしているときより、脳は15倍ものエネルギーを使うという説もある。そして、このぼんやりした状態が、仕事や勉強での注意力の減少を回復してくれる。

 だからスマホを見て息抜きをしてしまっては、逆に刺激を受けるばかりで脳の疲労は回復しない。休憩時間はあえて、ぼんやりしよう。

 その際注意が必要なのは、ぼんやりすると、自己批判やネガティブな考えが次々に浮かんでしまうことだ。

 そういうクセを自覚する人は、自然の中でマインドフルネスを実践することで、その傾向を避けることができる。「いま、ここ」に意識を向けて、緑の多い公園の中を10~15分歩くだけでも、副交感神経が整い集中力を回復できる。

 机の周りに植物を置くと、注意力は回復する。

 外の自然に触れる時間がなければ、せめてオフィスや部屋にいくつかの植物を置いてみよう。ケアレスミスがなくなるかもしれない。

 会議が始まる5分前に、資料の準備をしているようではダメだ。あえて植物の前でぼんやりと過ごすだけで、その会議は生産性の高いものになるはずだ。