その“旅”はユニークなものであり、1人ひとりが別の旅路を歩かなくてはならない。
ガンジー、アインシュタイン、ダ・ヴィンチ、マザー・テレサ、大谷翔平などを思い浮かべると、イメージしやすいだろう。それぞれの道は違っていても、自己実現に成功した人たちだ。
なんとなく、イメージが掴めただろうか。マズローの「自己実現」へ至る旅路は「欲求5段階説」として知られている。これらは、ビジネス書などではピラミッドの図で示されるが、じつはマズロー自身、ピラミッドの図に表してはいない。
第1段階「生理的欲求」
食べ物、水、シェルター、睡眠といった生命を維持するのに必要な本能的欲求。眠りたい、お腹が空いた、という状態でいると、その欲求が満たされるまでは、その上の欲求が湧かない、とされる。要するに、「腹が減っては戦はできぬ」ということだ。
第2段階「安全の欲求」
危険を避け、安心していたい。貯金をして、経済的に安全でいたい、仕事が嫌で嫌でたまらないけど、転職をするのはこわい、というのも、安全の欲求だろう。
第3段階「所属と愛の欲求」
社会とつながりたい、必要とされたいなどの帰属欲求。これが満たされないと、孤独や不安を感じてしまう。
第4段階「承認の欲求」
認められたい、尊敬されたいなどの欲求。この欲求はさらに2つに分けられる。
自己評価では、達成、独立、自由に対する願望。資格を所得したり、目標を達して、自分に自信を持ちたい気持ち。
そして、他者から受ける評価では、評判、地位などがある。
第5段階「自己実現の欲求」
自分の才能を活かして、理想の自分になりたい欲求。
食べ物を買うお金で
絵の具を買う画家もいる
この理論を発表した1943年、マズローは、約85パーセントのアメリカ人が、第1段階の欲求を満たし、70パーセントが第2段階、50パーセントが第3段階、40パーセントが第4段階、そして、10パーセントが最終の「自己実現」に達するだろうと予想していた。
しかし晩年になると、「必ずしも、第1段階から進んでいく必要はない」と明かしている。
食べ物を買うお金で絵の具を買う画家がいるように、第1段階の「生理的欲求」よりも、第4段階「承認の欲求」や、第5段階「自己実現の欲求」が強い人もいるのだ。その逆に、お金や地位がなくても、食べたいものを食べることができればそれで良し、とする人もいる。