さらに、「次の段階へ進むのに、100パーセントその段階の欲求を満たす必要もない」としている。ある程度満たされれば、それで良いのだ。

「文化の違いや人によって欲求段階の順序が違う、十分な裏付けとなる証拠が乏しい」などいくつかの批判を経て、人間性心理学から発生したマズローの欲求5段階は、現在ではポジティブ心理学のコンテクストのなかで語られ、ウェルビーイングと深く結びつけられるようになった。

自覚するべきなのは
自分がいま強く感じている欲求

 一言に「自己実現」といっても、人生のどの時期にいるのかによって、重視すべき欲求は違ってくる。価値観の違い、文化のバイアスもあることを踏まえたうえで、「自分がいま、強く感じている欲求」を自覚することが、瞑想、マインドフルネスを実践していくうえで役立つだろう。

 ちなみに、スティーブ・ジョブズの最後の公式メッセージは、“Actualize Yourself”だったが、臨終の際、彼のライフパートナー、妹、そして子どもたちを1人ずつ見つめ、“Oh wow, oh wow, oh wow”と口にしたと伝えられている。

 ジョブズは、自身の成功の象徴でもあるiPadを握りしめてはいなかった。

 自分の欲求がいま、どこの段階に属していて、どの段階を目指すのかを、客観的に把握するのも有益だろう。瞑想やマインドフルネスは、それぞれの段階の欲求に的確に対応してくれるはずだ。

 疲れているときにはストレス軽減を目的に、不安を覚えたら心を落ち着けるために、瞑想やマインドフルネスを取り入れればいい。

 もちろん、直感力を鍛え、自己の潜在能力を引き出し、可能性を広げてくれることが瞑想の驚異的な効果である点も忘れてはならない。