作家・五木寛之氏は聴力の衰えは「ボケ」を招く要因になる、と指摘する。より良く「ボケ」るために必要な心構えとサポートアイテムとは。※本稿は、五木寛之『遊行期 オレたちはどうボケるか』(朝日新聞出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

衰えるとボケにつながる4つの力
補聴器を使って知的活動を活発に

 ボケには、次の4つの「衰え」が密接に関係していると思います。

佐藤愛子佐藤愛子氏 Photo:JIJI

 1、聴力の衰え

 2、視力の衰え

 3、咀嚼力の衰え

 4、歩行力の衰え

 ジャーナリストの田原総一朗さんが著書『堂々と老いる』(毎日新聞出版、2021年)の中で、補聴器の話をしています。

 田原さんは、じつは私の後輩です。単なる早稲田大学の後輩だけではない。私は若い頃、東京の練馬にあった業界紙の集配をやるオフィスに住み込みで働いていました。

 部屋代を払わなくてすむのが住み込みの魅力です。その代わり、朝の4時に起きて働くという大変な仕事。きつくて1年ほどで辞めたのですが、私の後に入ったのが田原さんでした。

 田原さんは、君の前にいた人はこういう人だよ、と社長から聞いていたそうです。後年、「僕は五木さんの後輩です、大学のじゃなくて…」と自己紹介されて驚きました。

 それはともかく、田原さんは著書の中で「補聴器をつけるようになって、ずいぶん自分の知的活動が活発になった」と語っています。

 田原さんによれば、補聴器は買ってきて耳に入れたらすむというものではありません。専門の医師の診断を受け、聴力の度合いに応じていちばん適切な補聴器を選び、それを使いこなすトレーニングをする必要がある。