聴力低下により会話力も衰える
会話を減らさない工夫とは?
聴力が衰えると、おしゃべりする場を嫌うようになって、どんどん会話力も落ちてきます。
いちいち「え?なんだって?」と、耳に手を当てて聞き返していると会話がスムーズに進まない。そうなると、いわゆる自己嫌悪におちいって、自分から会話の機会を遠ざけてしまうのです。
かといって。高齢者の人たちの集まりにありがちですが、ときどき相手のしゃべっていることが聞こえなくなるにもかかわらず、わかったふりをして相槌を打ったりするのもよくない。人の話をちゃんと聞いて話す、という会話力はものすごく大事です。
そういう意味でも、聴力の衰えをカバーする補聴器は、高齢者の人たちにとって必需品の1つと言えるでしょう。
毎日新聞(2023年6月23日付朝刊)の投稿欄「仲畑流万能川柳」にこんな一句が載っていました。
食事中人間だけが談笑す(久喜 宮本佳則)
人間と他の動物を区別する事柄はたくさんあるでしょうが、この川柳を目にして、私がすぐ思いついたのは葬礼、死者を弔う行為。しかし調べてみると、チンパンジーにもそういう習性があるらしい。
食事をしながら話をする。あるいは話をしながら食事をするのは人間だけ。言われてみるとなるほどで、なかなか鋭いところをついている句だと感心しました。
確かに、たとえば犬とか猫の親子に餌をいっぺんに与えると、とにかく各々がガツガツ食べている。ぜんぜん相手のことを考えず、押しのけるようにして黙々と食べるだけです。
人間の場合、「今度、一緒に食事でもしませんか」と誘うのは、基本的には「ちょっとお話をしましょうよ」という意味なんですね。犬猫のようにモノを食べるだけにはなりません。
飲食しつつ会話するというのは、人間と他の動物との区別の1つであると同時に、すごく大事な行動だと思います。
漬物を噛む音で睨まれる永平寺
同じ禅宗でも異なる食事のマナー
作家デビューして間もない頃、月刊誌『文藝春秋』の仕事で、福井県にある曹洞宗の大本山・永平寺に入門してほんの短い期間、禅修行の真似ごとをした経験があります。