永平寺との違いに驚くと同時に「和気あいあい」というのがすごく気に入って、以来、萬福寺のファンになりました。

「孤食」がもたらす悪影響を
回避するための理想の食事

さて近年、食事をするときに1人で食べる「孤食」が問題視されています。子どもの健康面や精神面への悪影響だけでなく、孤食はボケの原因の1つとも言われています。

 やはり、歓談しつつものを食べる、というのが人間の理想でしょう。だから、みんな無意識のうちに、できるだけ1人で黙々とものを食べないようにしているのではないでしょうか。

 家にいるときには家族そろって食卓を囲み、一家団らんの中で食事をする。あるいは、会社にいるサラリーマンが「帰りに一杯どうだい?」と同僚を誘って、上司の悪口を言い合ったりしながら飲んだり食べたりする。みんな無意識のうちに孤食を避けているのだと思います。

書影『遊行期 オレたちはどうボケるか』(朝日新聞出版社)『遊行期 オレたちはどうボケるか』(朝日新聞出版社)五木寛之 著

 しかし、昭和の戦時中に育った私たちの世代は、学校で「男は、『はい』と『いいえ』しか言うな」というような教練を受けました。たとえば、教室でぺちゃくちやしゃべりながら弁当を食べていると、先生から大目玉を食らった。だから私たちの世代は、ともすると食べるときに一言も声を発しない。早めし、早ぐそ芸のうち、男は黙ってサッポロビール。そんなふうになりがちです。

 孤食になる傾向がある人は、意識的に孤食を避けるようにしたほうがいいと思います。

 私も外食するときには必ず誰かを誘うようにしています。無理やりにでも来てもらって、一緒にしゃべりながら食事をする。ただ私の場合、このことを年をとってからボケ予防のために始めたわけではありません。学生の頃からの単なる習慣なんですが。