カネカの創造力の源泉となる
5つの「つなぐ」力とは?

 2000年代に入ると、「第二の創業」期を迎える。2004年に社名を現在の「カネカ」に変更。そして2008年に第10代社長に就任した菅原公一氏(現会長)は、リーマンショックという危機に見舞われる中で、経営の大変革に乗り出した。2009年には長期ビジョン「KANEKA UNITED(カネカユナイテッド)宣言」を表明し、M&Aやオープンイノベーションへの取り組みを積極化。言わば、カネカ全体にとっての大きな「破」の時代の幕開けとなった。

 そして、2017年には「変革と成長」を掲げて、組織構造をソリューション志向に変革。翌年には新たな行動規範「ESG憲章」を制定。CSV型企業を目指して、大きく舵を切っていったのである。カネカにとっての「第三の創業」期であり、いまなお続く「離」のフェーズといえよう。

 菅原公一氏は2014年に会長職に就く。それ以降も、角倉護氏、田中稔氏、そして現在の藤井一彦氏という3代の社長を支えながら、15年以上にわたって、カネカの第二、第三の創業をリードし続けている。「中興の祖」と呼ばれるにふさわしい。

 以上、カネカの75年の歴史を、早回しで概観してきた。事業の多角化や海外展開は、日本の素材メーカーの成長の定番メニューともいえる。しかしそのプロセスをつぶさに見てみると、守破離という組織運動が成長の原動力となっていることが分かる。

 ここからは、カネカの進化の真髄と未来に迫ってみたい。そこにはシン日本流経営を目指すうえでの示唆が多く潜んでいるはずだ。

 カネカは、日本では「カガクでネガイをカナエル会社」として知られている。俳優の知花くららさんがコマーシャルを通じて、カネカが化学の力で我々の夢を現実にする姿を、分かりやすく伝えてくれる。

 海外ではそれを、「ドリモロジー(Dreamology)」と呼ぶ。といっても、あまり聞き慣れない言葉かもしれない。それもそのはず、カネカの造語だからだ。dream(夢)とlogy(学)を合成したもので、日本語に直せば「夢学」とでも呼ぶべきか。

 カネカは、自社が目指す企業像として、「ドリモロジー・カンパニー(Dreamology Company)」を掲げた。日本語に直すと「先見的価値共創グループ」だという。これもやや分かりづらい言葉かもしれない。

「先見的」は未来志向を意味する。そのためには未来への深い洞察力が求められる。ペイン(pain)、すなわち顕在的な課題を解決するだけでなく、ゲイン(gain)、すなわち「あったらいいな」という潜在的な価値を創造することを指す。

 では「共創」とは何か。自社単独ではなく、顧客やパートナーとともに、新しい価値を創造することである。カネカはそれを「つなぐ」というキーワードで表現する。

 研究開発型企業として「未来をつなぐ」、グローバル企業として「世界をつなぐ」、カネカグループとしての「価値をつなぐ」、絶えずチャレンジして「革新をつなぐ」、そして人の成長を大切にしてイノベーションを実現するために「人をつなぐ」。この5つの「つなぐ」力が共創の源泉となる。

 そのためには、組織として3つの力が求められる。