カネカ発の「つけ毛」が
アフリカ人女性に大ウケした理由

 それは、1983年のニューヨークの街角のワンシーンから始まる。たまたまニューヨークに出張していたカネカの営業担当者が、セネガルから来た黒人女性がカネカロンのつけ毛を大量に買い込んでいるのを目撃。すぐその足でアフリカに飛んでみて、そこに大きな未来の市場が広がっていることを直感する。

 それ以降、代々の営業部隊が、みずからの足でアフリカでの販路を拡大していった。まず市場の現実を直視する。そして、商社を通さない独自のサプライチェーンを構築していく。それがカネカ流の市場イノベーションの真髄である。

 多くのアフリカ女性たちにとって、いまやつけ毛は生活に欠かせないアイテムになっている。

「彼女たちの髪はそのままでも自然で美しいのですが、カールの強い髪は、櫛でとかすのが大変など、不便な面もあります。そこで、生活が豊かになるにつれて、より手軽にヘアスタイルが楽しめるアイテムとして『つけ毛』、すなわちウイッグやエクステンションが普及しました。ヘアスタイルのバラエティが豊かなうえ、忙しい生活の中でも短時間で身だしなみを整えることができ、アクティブに活動する助けになるんですよ」

 語り手は、カネカロン事業部商品開発グループの織田雪世氏(2014年当時)。彼女は学生時代を含めてガーナに8年住み、ガーナ人美容師の研究や現地での国際協力業務に携わった後に、2012年から、カネカロン事業部のメンバーとなった。

「ガーナの美容室でカネカロンのロゴをよく目にしたので、ずっと気になっていました。だからカネカで働けることになった時は、すごくうれしかったですね」

 織田氏は、顧客であるアフリカ女性を理解する、心強い「現場通」である。

「女性たちは、自分が素敵であるというただそれだけのことで、自信や前向きに生きる勇気をもち、言わば10歩でも100歩でも遠くに歩いて行ける。私たち日本人が考える以上に、彼女たちにとって、つけ毛は大事なものなのです」