代々の大金持ちの正式な晩餐に
欠けた皿が出る理由に感激
そのお墓には、おじいさんのほかに、おじいさんの先妻のアグネスさんと、アグネスさんのお父さんと妹が埋葬されている。遠い親戚のおばあさんというのは、アグネスさんの前夫との間の子どものお嫁さんだから、うちとは血のつながりはないのだけれど、私たちにとても親切にしてくれた。そして家に招待してくれた。
そのハワードさんの家はヒルズボローという所にある高級住宅地で、ビング・クロスビイの家が近くにあるという。
ハワードさんの家はおばあさんのひとり住まいで、こぢんまりしているけれど、たいへん立派なものだった。どの家具ひとつとっても、もしアンティークの店で買ったら何百万円もするようなもので、それもアンティークの店で買ったものではなく、代々受けつがれて持っているのだ。
ということは、ハワード家は代々の大金持ちであり、アグネスさんもそうだったらしい。そして私のおじいさんも、家系はスコットランドの貴族の出、アメリカでも広大な土地を持っていたのだという。だからアグネスさんとブイおじいさんの結びつきは、今でも記録として残っていて、お墓の管理人のおじさんが図書館でコピーして送ってくれていた。
家はこぢんまり(といっても、日本の常識から言えば大きいのだが)しているけれど、庭は先が見えないくらい大きくて、りすやラクーン(編集部注/アライグマのこと)が遊びに来るという。
そのときは昼間だったが、ハワードさんは晩餐のメニューで歓迎してくれた。料理を作るために日本人の女の人が呼ばれていた。この人はずっとアメリカに住んでいるのでもう日本語はあまりうまくなくなっている。パーティがあると料理を作るために呼ばれるのだそうだ。そして黒いスーツに真っ白なフリルのついたエプロンをして料理を運んでくる。これは正式な晩餐のときに着るスタイルだと教えてくれた。
ところがお皿はふちが少し欠けていた。正式な晩餐にしては、おっかけ茶碗を出すなんて変な家だなあと私は思った。