この調査から20年以上たった2016年、人的資源管理論などを専攻する経営学者の松山一紀は、同様の項目を用いて全国の「上司がいる部下」1000人にウェブで調査を行った。
すると「この会社でずっと働きたい」という回答は25.4%と世界青年意識調査の結果と大差ないが、「変わりたいと思うことはあるが、このまま続けることになろう」という回答は40.5%と大幅に増えている(松山一紀『次世代型組織へのフォロワーシップ論-リーダーシップ主義からの脱却』ミネルヴァ書房、2018年、104~105頁)。対象となる年齢層が異なるので単純な比較はできないが、消極的な帰属意識は以前よりいっそう強くなっている可能性がある。
経済成長にともない
薄れる労働組合の存在感
1970年代をピークに、ストライキをともなうような激しい労働運動は減少の一途をたどった。ちなみに厚生労働省の統計によると、国内の総争議は1974年の1万462件をピークに減少傾向をたどり、2023年には292件にとどまっている(厚生労働省「労働争議統計」)。
いっぽう被雇用者のなかで労働組合に加入している人の割合を表す労働組合の(推定)組織率も、1949年の55.8%から低落傾向が続き、最新の2024年には16.1%と2割を大きく下回っている(厚生労働省「労働組合基礎調査」)。
争議件数の減少や組合組織率の低下は、労働組合そのものの存在感が薄れていることを意味する。労働者が組合に期待し、頼ってきたものが経済の成長、社会の成熟にともなって自然と満たされてきたのである。
たとえば日本の失業率は他国と比べて低い水準が保たれており、雇用に対する危機感は薄い。また職場環境は改善され、かつて3K(キツい、汚い、危険)と呼ばれたような職場は少なくなった。
そして、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化などを定めた働き方改革関連法が2019年4月から順次施行され、パワハラ防止法が2020年6月(中小企業は2022年4月)から施行されるなど、この10年ほどの間に労働者保護の法律が整備された。また近年は労働審判制度の導入など、労働者の保護につながる環境づくりも進んだ。