そして労使関係における中心的なテーマだった賃金についても、近年は企業が人材確保のため自発的に引き上げ、政府も企業に対して賃上げを積極的に働きかけるなど状況が大きく様変わりした。
その結果、労働組合の必要性をあまり感じない社員が増えたのだ。組合に入っていても「何となく」、あるいは「つきあいで」という意識の組合員が大半で、とりわけ若手組合員に役員を引き受けてもらうのは難航すると組合幹部は悩みを打ち明ける。
いっぽうで上司の側の部下に対する関わり方も変わった。パワハラなどハラスメントのリスクを恐れて、部下に厳しい態度を取ったり強く要求したりすることが少なくなり、部下を飲みに誘うことも減ってきた。必然的に職場のコミュニケーションが淡泊になっている。上司の側にも、部下に対して「深く関わらないほうが得だ」という本音が見え隠れする。
日本企業でQCサークルが
衰退した当然のワケ
何事でも同じだが、必要性がなくなれば機能は衰える。自分たちの手で会社という共同体と社員の生活を守らなければならない、という責任感と連帯感がなくなれば、「自治」の機能は弱まっていく。あとは波風を立てず、無難に職業生活を送ろうという気持ちになっても不思議ではない。
「自治」「自主」をモットーにするQC(品質管理)サークルなど小集団活動の盛衰も、それを象徴的に表している。
職場のメンバーによる「自主的」活動であるQCサークルは、1950年代に日本企業の製造現場に導入されると爆発的に広がり、製造現場のみならず事務や営業などの部門にも導入が進んだ。「自主的」活動とはいうものの、実際は企業主導で進められたのが現実である。
しかし当時は勤務時間外に無給で行われ、また活動が長期間継続したことなどからもわかるように、半面では社員の主体性が活動の原動力になっていたことは否定しがたい。
ところが1990年代あたりからQCサークルは下火になり、やがて消滅したところや細々と続いているところが多い。