それを受け、日本でも会社法をはじめとする法改正によってコンプライアンスが強化され、公益通報者(内部通報者)保護法も制定された。

 企業もまた自社のイメージと企業価値の向上のため、CSR(企業の社会的責任)の向上やコンプライアンスの徹底を唱えるようになった。社会的にもポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)が叫ばれるなど、組織の内外において不正撲滅の要求水準が上がった。

SNSの普及により
「壁に耳あり障子に目あり」の時代に

 また2017年にアメリカから始まった、セクハラや性犯罪を告発する#MeToo運動が短期間に世界を席巻し、セクハラや性犯罪にかぎらず、人権侵害は許さないという社会規範ができあがっていった。しかし共同体型組織のなかには古い体質から抜け出せないところも多く、国内外から厳しく糾弾されることになった。

 そこで大きな役割を果たしたのはインターネット、とりわけSNSの普及である。国民の8割以上が利用しているといわれるSNS。これだけの人が利用しているわけだから、もはや「壁に耳あり障子に目あり」で、どんな不正でもみつけられ公にされる可能性が高い。

 これまで口をつぐんでいた共同体のメンバーや、アルバイトなどメンバーシップの枠外にいる人、退職した人などがSNSを使って組織の内実を暴露するケースも増えてきた。まして、もともと共同体の外にいる人たちは忖度も手加減もしない。隠れていた不正が一気に白日の下にさらされ、世間の非難を浴びた。

 そして深刻化する出版不況のもとで生き残りをかけた週刊誌は、「柳の下」に二匹目、三匹目のどじょうを求め血眼になってターゲットを探す。ネットに載ったスキャンダルは、刺激に飢えた庶民によってSNSで拡散される。このようなパターンがある意味、構造化されたのである。

 こうして外からの告発の閾値(反応や現象が起きるのに必要な最小値)が著しく低下した。