長年にわたる悪習が2023年に
続々と露見したのは偶然ではない
そうなると、マスコミにしても政府にしても、内側の共同体型組織の不正を大目に見たり制裁に手心を加えたりすることができない。かりにそうしようものなら自身が叩かれ、窮地に陥るからである。
マスコミがジャニーズに対し一転して厳しい報道を始めたのも、自民党が派閥解消への圧力をかけたのも、日本大学がアメフト部の廃止を決めたのも、背景には馴れ合いや手加減を許さなくなったネット社会の存在が垣間見える。
相撲協会や各種スポーツ団体だって、もはや内部の組織をかばうことが難しくなったと自覚しているに違いない。ちなみに宮城野部屋力士による暴力行為(編集部注/宮城野部屋の北青鵬が、1年以上に渡り弟弟子2人に週数回の暴行を繰り返していた事件)も、日本相撲協会公式Xに届いた告発をきっかけに協会が調査を始め、問題が発覚するという経緯をたどった。

要するに、これまで日本では二重、三重の共同体が内部のメンバーを庇護してきたが、外側の共同体が崩れ、内側の共同体が直接社会の厳しい視線にさらされるようになったわけである。
たとえていえば、免疫が低下した人が真冬に突然コートを脱がされたようなものだ。空洞化した共同体にとって、先鋭化した「正義」の告発にはとても耐えられなかったのである(編集部注/筆者は、共同体における「自治」の消滅を空洞化と呼ぶ。「自治」とは、共同体のために自らが主体的に貢献し、メンバーとしての責任を果たすこと)。
2023年のドミノ的な組織崩壊には、このような必然性があったといえよう。