企業人はいう。もはや建前と本音の使い分けは通用しなくなったし、「清濁併せ呑む」かつての大物タイプは、濁った酒を一滴口にした段階で即淘汰(とうた)されてしまうと。

共同体型組織同士の
「持ちつ持たれつ」は終わった

 もう1つ注目すべき点は、共同体システムそのものの変容である。

 日本では共同体が入れ子状態になっている。企業など共同体型組織の外側には業界、政府、そしてマスコミなどがあり、それらもまた共同体としての性質を備えている。したがって、それらを「外郭共同体」と呼ぶことにしよう。

 外郭共同体は部分的にせよ、内側の共同体と一種の相互依存関係にあり、共同体型組織を外部からの厳しい批判やプレッシャーから保護する緩衝材の役割を果たしていた。

 批判を恐れずにいえばマスコミと政府や大手芸能事務所などとは「持ちつ持たれつ」の関係にあり、ジャニーズのケースのようにマスコミは加害行為を知っていても取りあげるのを控えるようなところがあったし、森友学園の問題のように政府と学園の癒着が表立って指摘されないこともあった。

 ところが不特定多数の人々からなるSNSは、忖度も手加減もしない。そのSNSが、部分的であるにせよマスコミなど既存の媒体にとって代わった。あるいは外側の共同体に馴れ合いを許さなくなった。図2-3はそのイメージを表したものである。

図表:共同体の「入れ子」構造の変化同書より転載
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