「山下本気うどん」を支えた
名だたる芸人たちの応援

 そんな中、山下氏が、うどん屋を開業したのは偶然だった。Twitter(現在のX)を始める際、投稿するネタのひとつとして、うどん屋めぐりを始めたのがきっかけだった。

「新宿の『うどん 慎』というお店に出合ったのが全ての始まりです。うどん屋を200店近くめぐった中で、慎がめちゃくちゃ美味しくて。うどんを作りたいと思って店主さんに相談したら、僕のことを知ってくれていて、すぐにOKもらえたんです。定期的にお店に通いながら1年ぐらい修業させてもらいました」

 山下氏の情熱が伝わったのか、慎の店主は、調理方法だけでなく飲食店のノウハウから仕入先まで手取り足取り指導してくれた。唯一の問題は開業資金だったが、それも芸人仲間の応援でクリアできたという。

「今田耕司さんと宮迫さんから500万円ずつ出資してもらえました。しかも、『山下本気うどん』という屋号は、堺正章さんが付けてくれたんです。正直、最初聞いたときはダサい名前やなって思ったんですけど(笑)。僕としては、夜はお酒も楽しめる大人なお店にしたくて、スマートな名前にしたかったのに、“本気”とか、自分の名前が堂々と入ってる……。でも、いろんな人から『ええ名前やん』って言われるので、親しみやすい名前で良かったなって今は思ってます」

 2012年、目黒駅近くに1号店をオープン。師匠の店で提供していた「かしわ天ざる」からヒントを得て、鶏天にタルタルソースをかけた「鶏天タルタルぶっかけうどん」を出したところ、これがヒット。また、芸人であったことも追い風となった。

「例えば年末の特番で、放送中に108杯うどんを作れるかっていう企画をしたり。いろんな宣伝効果もあって店は繁盛して、2年ほどで今田さんと宮迫さんに借金を返せたんです」

 うどん店が成功した理由について、山下氏は「本気」が何より大事と断言する。

「僕は、うどん屋を始めてからは、よほど別の仕事が入っていない限り、朝から晩までお店に立ち続けました。最初の2年は、ほんまにしんどかった。けど人に任せていたら、経営者の熱がスタッフに伝わらないし、改善すべきところも肌感覚で分からない。気付いた時には引き返せない状況になってしまう。だから、本気でお店と向き合うのが大事だと思うんです。堺さんが付けてくれた“本気”という言葉の意味を、実感しますね」

 うどん店のオープンから10年が経過したある日。山下氏は、以前から関心を持っていた資産運用をスタートさせた。インタビュー後編では、資産を2億円に増やすまでの経緯と、最近のトランプ関税による株式投資の一波乱、お金や働き方についてのモットーを語ってもらった。

とり天タルタルぶっかけ山下本気うどんの人気メニュー「鶏天タルタルぶっかけうどん」 写真:本人提供
オモロー山下オモロー山下/1992年、渡辺あつむ(現・桂三度)と「ジャリズム」を結成。1998年にコンビを解散し、ピン芸人として活動するが、2004年にジャリズムを再結成。11年に再び解散し、芸名をオモロー山下に。12年、うどん店「山下本気うどん」を開業。21年、「山下本気うどん」の商標権を売却し、同店プロデューサーに。同年、M-1グランプリに出場。25年、ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得。
>>後編を読む『「資産2億円」達成の人気芸人、トランプ関税で8000万円吹っ飛んでも余裕のワケ』