ところが座り仕事などで同じ姿勢を続ける、慢性的な運動不足……といった現代人の生活は、ファシアから大事な「ゆるさ」を奪ってしまいました。
それによって筋肉の「滑走性」が失われ、さらに痛みやコリといった症状まで現れてくるのです。
なかでも肩甲骨につながる筋肉のファシアは特に「ゆるさ」が失われて癒着しやすいため、多くの人たちが頑固な痛みに悩まされているわけです。
ファシアが硬ければ
手術しても痛みは取れない
腰や膝、肘の手術をしたあとに、いっこうによくならない痛みが存在します。
神経の圧迫は取れ、膝も人工関節を入れてきれいな形になったのに、痛みが残っているケースです。
痛みにはレントゲンやMRIで分析することができない原因が存在します。手術前より痛みで体を動かすことができなかった方は、背骨や関節周囲のファシアが硬くなってしまい、筋肉の動きが悪くなっています。そのため、むくみも強く、周囲の血流が停滞しているのです。
また、痛み自体も関節以外の部分に異常な毛細血管(モヤモヤ血管)ができてしまっている場合があります。画像で異常がなければ安静は禁物です。動かしながら痛みが軽減するのを待ちましょう。

同じ姿勢を続けがちで、あまり動かさない上半身の筋肉のファシアには多かれ少なかれむくみが生じており、そのせいで本来の「ゆるさ」が失われ、コリや痛みといった症状が引き起こされます。逆に言えば、コリや痛みを感じるのはファシアがむくんで硬くなっている証拠なのです。
多くの人は、コリや痛みを感じる箇所を揉んだり、叩いたりすることで解消しようとするでしょう。しかし、肩こりと同様に、痛気持ちいいからといって強く揉んだり叩いたりすると、その筋肉のファシアが傷んでさらに硬くなってしまいます。
一時的には回復したように思えても、結果的にはさらなるコリや痛みに悩まされることになりかねません。
コリや痛みは揉んだり叩いたりしても解消しません。大事なのは、むくみを流してファシアをゆるめ、筋肉の動きをよくすることなのです。