いつまでも肩が痛い…それ、五十肩じゃないかも→コロナ禍で急増した「謎の痛み」の正体【医師が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

コロナワクチン接種後の肩の痛みや、交通事故の後も「むちうち症」などに代表される慢性的な痛みは、生活の質を大きく下げ、メンタル面にも悪影響を及ぼす。これらの長引く痛みが、完治する日は訪れるのか?現役医師と医大教授が「痛み」の原因と治療法の最前線について語り合った。※本稿は遠藤健司・奥野祐次『こんなに痛いのにどうして「なんでもない」と医者に言われてしまうのでしょうか』の一部を抜粋・編集したものです。

注射後の痛みがひかず
SIRVAという病気が急増

奥野祐次(以下、奥野) 新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界でパンデミックを起こし、日本でも2020年4月に緊急事態宣言が発出され、私たちの生活が一変したことは、読者の方々もきっとご記憶のことでしょう。

 翌2021年からメッセンジャーRNAを使った新しいタイプのワクチンが開発され、医療従事者がまず接種し、「国内で1日に100万回接種を達成しよう」という政府のかけ声のもと、多くの人が筋肉注射を左肩に受けることになりました。

 しかしこの期間、ワクチンを接種したあとに左肩に強い痛みが生じて、五十肩のような状態になってしまうSIRVA(シルバ。サーバとも呼ばれる)という病気が急増していたことをご存じでしょうか?実際、私たちのような肩痛の専門家のところにはたくさんの患者さんが来院されました。

 このSIRVAという病名は、「ワクチン接種に関連する肩の損傷」という意味の英語(Shoulder Injury Related Vaccine Administration)の頭文字をとったものです。