母親が信頼する女医の
“鶴の一声”で問題が解決
このNさんには自閉スペクトラム症の特性があり、これまで医療機関で診断こそ受けていないが、Nさんの母親によると、小学校の頃からこだわりの強さや柔軟に物事に対処できない特徴があったとのことである。
あるときは、学校の行事予定をコロコロと変える対応に腹を立て、校長先生にも文句を言ったこともあった。
ただ、今回の場合はNさんの気持ちの問題だけでなく、子どもにもかかわることであり、Nさんのこだわりが子どもの生命にも影響する重大な局面にもなりかねない事態である。
そこで、保育園だけでなく、相談を受けた児童相談所、地域の子育て支援センターがこの対応を協議することになった。
子どものことを思うNさんの気持ちは十分に理解できるものの、こだわりの強さから目の前の事態に柔軟に対処できず、それが子どもへの危機場面となっている。
しかし、誰がどう説得しようとしてもNさんには届かず、事態が改善しないばかりか、このままでは児童相談所が子どもを一時保護し、親権の一時停止などの手続きをするなどして対処せざるをえないとの話し合いになった。
そんなとき、会議に参加していたケースワーカーから、「Nさんは出産をした病院の産婦人科の女医さんのことはすごく尊敬をしている」との話があった。みんなはこの医師からNさんに助言をしてもらい、母乳からミルクに代えるように説得してもらおうということとなった。
この女医の先生も事情を理解してくれ、数日後にNさんを呼び出して話をしてみるとの協力が得られた。すると意外な展開を迎えた。その先生は「その後どうですか?子育てで困ったことはない?」とNさんに質問したところ、Nさんは「そうですね。母乳があまり出ないのです」と述べた。
そこですかさず先生は「じゃ、明日からミルクに代えたら」と言ったところ、意外にもNさんは「そうします」と言うのであった。