ゼウスの怒りにふれ、死後、地獄に落とされて大石を山頂まで押し上げる罰を受けたものの、その大石は必ず転げ落ちる……ギリシャ神話のシジフォス王の物語りになぞらえて「シジフォス実験」と銘打たれたこの実験。レゴが大好きな被験者を集め、彼らにロボットをつくるように指示します。そして、完成したものを被験者の目の前で解体してしまうのです。
実験の結果分かったことは、人々にやる気を失わせるには、「頑張ってつくったレゴを目の前で解体する」というように、その人の仕事の成果を無視して、徒労感を与えればいいということでした。
たとえ自分が大好きでこだわりがある仕事だったとしても、誰にも相手にされることがなく、徒労感を覚えてしまえば、人はやる気を失ってしまうのです。
一方、やる気を出させるには、「とてもがんばってつくっていたね」「見事な作品なので、またつくってほしい」など、その人の仕事を認め、労いの言葉をかけてあげればいいということでした。
先の会話でいえば、ジョギングが苦手な人も、第三者から「最近痩せた?」とか「顔がすっきりしている」などと言われれば、その気になって自分の選んだ決断に対してポジティブになれるのです。
つまり、手ごたえをどうやって作り出すかが大事であって、自分のこだわりで選択するという行為自体は、さほど重要なことではないのです。
では、具体的にどのようにして手ごたえを作り出し、やる気を引き出せばよいのでしょうか?
成果や積み重ねが見えると
努力は続けやすくなる
大きな目標に向かっていきなり進もうとすると、なかなか成果が見えにくいので、徒労感に押しつぶされてしまうことが多いです。そのため、「1週間で3回ジョギングする」「今日は10分だけ走る」など、小さく達成しやすい目標を設定しましょう。
スタンフォード大学のバンデューラ(編集部注/アルバート・バンデューラ。心理学者)によれば、小さな成功体験の積み重ねが自己効力感を高める、つまり、達成できたという感覚が手ごたえとなり、徐々に次の挑戦へのモチベーションを高めてくれるのです。