暴行は男性の注意に対して男が抱いた屈辱感が原因と推認され、通勤との因果関係も認められないとした。
これまでも、車内での座席の使い方や態度が目に余れば注意していた男性。トラブルに発展したのは今回が初めてだったという。
法廷で「事件のことが頭から離れることはいっときもない。もし同じようなことがあったらどうすればいいか、自問自答しながら電車に乗っている」と吐露した。
電車では様々な
迷惑行為に直面する
日本民営鉄道協会の2023年度のアンケート(複数回答)で、駅や電車での迷惑行為について、回答した約8200人の37.1%が足を伸ばすといった「座席の座り方」を挙げて最多だった。
「酔っ払った状態での乗車」も14%あった。互いに見知らぬ多くの人が一定時間、閉鎖的な空間に同乗する電車では様々な迷惑行為に直面することがある。
2023年3月の東京地裁判決は、裁判官の経験に基づいて「公共交通機関を利用する際に、日常的に迷惑行為を行う者に遭遇するとまでは認めがたい」と指摘した。男性が受けた暴行と通勤との関連性は薄く「通勤中のケガ」とは言えないと判断。「(男性の行為が)善意によるものだったか否かで認定は左右されない」とも述べた。
暴行は男性の言動が引き金になった可能性も排除できず、通勤に起因する災害とも言えないとして、不支給は適法と結論付けた。男性は控訴せず、結論を受け入れた。
男性の法廷証言によれば、一連のトラブルの間、他の乗客が助けに入ることは全くなかった。床に倒れ込んだ男性を介抱しようとする人もいなかった。
ホームでもみ合いになっている間、車内に残した男性のバッグは誰かが車外へ放り出し、電車は何事もなかったかのように次の駅に向けて走り出していった。