そのため、暴力団が指揮命令系統を明確に持つ組織であることを理由に、組員が行った暴力行為や違法行為によって第三者に損害が発生した場合、その行為を行った組員だけでなく、その活動を組織的に指揮または命令した上部の使用者側にも賠償責任が生じると民法上の解釈をする流れも生まれた。

 これは、組織的な犯罪活動に対して使用者責任を負わせることで、暴力団による犯罪行為を抑止しようという狙いや、末端の組員個人そのものには賠償能力がないことも多いため、組織全体や幹部に責任を負わせることで被害者救済を図るという意味がある。

 そうなると暴力団の中には、傘下組員に対して「組織の名前を出して恐喝や喧嘩をするな」と行動制限を設けたり、資金獲得活動を大っぴらに行うことを避けたりしようとする動機が生じてくる。

 そうして生まれた組織犯罪界におけるパワーバランスの変化の中で、新たな資金獲得領域に進出していったのが半グレ集団だった。

「ライバル関係」というより
共存共栄しているヤクザと半グレ

 暴力団のような厳密な組織体系を持たない半グレ集団は、柔軟で迅速に犯罪手法を変化させるのが特徴でもある。

 特殊詐欺や投資詐欺、インターネット・SNSを使った恐喝など、現在大きな社会問題となっている犯罪の多くは、新しい資金獲得領域をどんどん広げていった半グレ集団らによって生み出されたものだとも言えるだろう。

 また、恐喝、闇金、繁華街でのスカウト活動、風俗店の斡旋、キャバクラや風俗のぼったくり営業など、従来は暴力団の資金源になっていた領域についても、表に直接出ることを避けるようになった暴力団の代わりに、半グレ集団がその多くを担うようになっていく。

 ただし、半グレ集団が暴力団の資金獲得領域を奪いにいっているライバル的な存在かというと、そう単純な構図でもない。半グレ集団と暴力団の関係は複雑だ。

 暴力団側としては、自らが直接関与できない犯罪活動や新たな資金獲得活動への参入、自ら動くことで目立つリスクを回避するため、半グレ集団を利用したいという動機がある。

 一方で、半グレ集団側としては、敵対的な関係にある他のグループから身を守るため、暴力装置として暴力団との繋がりを利用したり、大規模な犯罪活動を行うなどするための資金提供元として暴力団を頼りたいという動機がある。

 つまり、双方はライバル関係というよりは、それぞれの立ち位置に応じた協力関係にあるとみるのが正確なところだろう。