もちろん、一部の暴力団と半グレ集団が対立したりするケースもみられるが、組織犯罪全体の動向としては、協力しあっている面のほうが多いと考えられる。
そのため、警察としてはどの半グレ集団が、どの暴力団と関係を持っているか、地元の先輩後輩などの人的な繋がりがあるかどうかなど、双方の関係性に関する情報収集にも2010年代以降から力を入れるようになった。
そして、組織犯罪の構図が大きく変化する中、警察庁は2013年3月に、六本木フラワー事件(編集部注/2012年に六本木のクラブ「フラワー」で起きた殺人事件)を引き起こした関東連合や、中国残留孤児の二世・三世らによって構成される怒羅権など、全国の十数の半グレ集団を「準暴力団」と規定することで、組織犯罪として厳重に取り締まる対象とした。
現在ではその対象も増え、全国の約80グループが準暴力団として位置付けられている。なお、準暴力団傘下の人数規模について警察庁は明らかにしていないが、約4000~5000人程度はいるとみられている。
マフィア化する素行不良者たち
警察も把握できない半グレの全貌
よく知られていることだが、自ら看板を掲げ、幹部がメディアに顔を堂々と出している組織犯罪集団が社会に存在している国というのは、世界でも非常に珍しい。
暴力団のルーツが、江戸時代の任侠組織や、第二次世界大戦後の闇市などで治安維持の一翼を担った愚連隊などにあることから、日本社会における暴力団は長らくアンタッチャブルの存在ではなかった。むしろ地域社会に溶け込んできたと言っても過言ではない。
だが、止めどなく組織が肥大化し、バブル経済の中で過激化していったことで、警察や社会の暴力団に対する目は厳しくなっていった。
その結果、暴対法や暴排条例によって暴力団社会が縮小していったのはここまで記してきた通りである。その状況と相対するように起こっているのが、素行不良者たちの「マフィア化」だ。
イタリアの代表的な組織犯罪集団であるマフィアは、誰が幹部で、誰が構成員であるかを一切明かすことのない非公然組織である。法執行機関によって顔写真や名前が公表されることはあっても、自らマフィアであることを公に認めることは滅多にない。それは認めること自体が大きな罪になることの裏返しでもある。これは南米やアジアの組織犯罪集団も同様だ。
日本においても、暴力団の組員であることのデメリットが大きくなったことで、暴力団の中には、あえて組織に組み入れずに、表面上は「カタギ」として、地下で活動させるためのグループを持つところも出てきているとみられる。
また、そもそも暴力団とは一定の距離を持ちながら、独自にグループを形成して活動する素行不良者たちが増加していることで、警察が把握できない限りなくクロに近いグレーゾーンに生息する者たちも相当数いるとみられる。