
お腹の赤ちゃんの病気の有無を調べる新型出生前検査(NIPT)。結果次第では難しい決断を迫られる検査であるため、医療機関では、検査前から「遺伝カウンセリング」を行っている。今回は、ある夫婦が受けたカウンセリングの様子を紹介する。※本稿は、毎日新聞取材班『出生前検査を考えたら読む本』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
NIPTの検査前から
カウンセリングを実施
出生前検査を受けたカップルは、結果次第で妊娠を続けるかどうかという難しい決断を迫られる。
正確な知識を得た上で少しでも冷静に意思決定してもらおうと、医療機関が検査前から遺伝カウンセリングを実施している。
中絶方法などを伝え、時には重苦しい雰囲気になることもある。
私たちは、ある夫婦が受けたカウンセリングに同行した。
2022年5月、私たちは日本医科大学付属病院(東京都文京区)を訪ねた。医局のインターフォンを押してから数分後、「お待たせしました」と、白衣姿の川端伊久乃医師が現れた。
川端医師は産婦人科医であり、大学の准教授(取材時は講師)も務めている。臨床遺伝専門医の資格をもち、出生前検査の遺伝カウンセリングを担当していた。
私たちが、NIPTの遺伝カウンセリングの様子を取材したいと申し込むと、川端医師は、相談者の特定に至らないよう匿名記事にすることを条件に協力してくれた。
川端医師に案内され、エレベーターに乗った。たどり着いたのは、「特別診察室」という小部屋で、通常の産科外来とは別のフロアにあった。
中には木目調のテーブルと茶色いソファーが並んでおり、さながら応接間のようだった。入り口のドアを閉めると中は静かだった。