
お腹の赤ちゃんの病気の有無を調べる新型出生前検査(NIPT)。陽性反応が出れば当然妊婦たちは混乱するが、そのフォローやサポートをせず、日本医学会にも認められていない「無認証クリニック」の存在が問題となっている。その存在に、警鐘を鳴らす研究者も多い。※本稿は、毎日新聞取材班『出生前検査を考えたら読む本』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
産婦人科未経験の
お飾りの勤務医たち
無認証施設に勤務する医師の多くは、産婦人科とは無縁だ。
大学教授や病院長まで務めたことのある高齢の小児科医。大学病院で放射線科医として働いた後、美容脱毛クリニックなど勤務先を転々とする若手医師。大学病院に所属しながら無認証施設でアルバイトする腫瘍(しゅよう)内科医……。
経歴を調べると、さまざまな背景をもった医師が流れ着いている。
高収入にひかれて、無認証クリニックで働いた経験のある西日本の男性医師に話を聞いた。
男性医師はもともと自分の診療所をもつ開業医だった。新型コロナウイルス感染症の流行に伴って政府が外出自粛を要請すると、来院する患者が激減。経営が行き詰まった診療所を閉鎖し、働き口を探していたところ、無認証クリニックの求人を見つけた。
用意されていたのは、新たに開設するNIPT専門クリニックの雇われ院長ポストだ。週4日の勤務で、年収は1700万円程度になる。この地域の勤務医の年収相場より数百万円高く、魅力的だった。
男性にとって産婦人科は専門外で、ましてや出生前検査の知識はなかった。それでも、応募するとすぐに採用された。
「たまたま他にいい人が見つからなかったようだ」と振り返る。