元来のイメージとは、全く逆の代物ですよね。これがデザイナージーンズの面白い所です。

 モードの帝王であるイヴ・サンローランが、「叶うことなら私がブルージーンズを発明したかった」と語ったというのは、現在も語り継がれる有名な逸話です。

 またモードとは少し文脈が違うのですが「プレミアムジーンズ」というのもありました。ヌーディージーンズやリプレイ、トゥルーレリジョン等が該当します。プレミアムジーンズとは、文字通り高級なデニムの事を指し、一時に起きたジーンズブームの筆頭として人気を博しました。

ラルフ・ローレンは
実は服が作れない?

 アメリカのファッションについて解説したこの流れで、もうひとつ触れておきたいブランドがあります。「ラルフ・ローレン」です。

 ラルフ・ローレンはブルックス・ブラザーズやJプレスと同じような、いわゆるアメカジ、アメトラのブランドですが、これら2つに比べてかなり後発のブランドでした。

 誕生は1968年、実は60年代に日本で起きたアイビーブームよりも後にできたブランドなのです。

 ラルフ・ローレンは、デザイナーというより実業家といった方がしっくりくる人物です。実際彼は、服飾の専門的な教育は受けていませんし、布の裁断もスケッチを描くこともできません。要するに、服は作れない人でした。

『VOGUE ファッション100年史』(スペースシャワーネットワーク、2009年)という本では、「ラルフ・ローレンはマーケティングの天才、魅力的なイメージ作りの名人」と評されています。

 彼の魅力は、そのブランディング能力にありました。

 例えば、ターゲットにする層。ラルフ・ローレンはアメリカの上流階級にターゲットを絞り込んで、ファッションをはじめとするライフスタイルを提案しました。

 ラルフ・ローレンには「ポロ・ラルフ・ローレン」というライン(括り)もありますが、ポロとはそもそもお金持ちがやるスポーツです。その名前を自身のブランドにも付けることで、高級なイメージを打ち出したんですね。

 またラルフ・ローレンといえば胸元についているポニーのマークが有名ですが、これもブランド立ち上げ当初から付いていたものではありません。アクセントとして後付けで考えついたものでした。