オートレース場で「差せぇ」と怒声を上げる男性たちや、車券が外れたのか、レース結果に対して「バーカ!」と言ってチッと舌打ちをする男性の姿、小さな子どもを連れてオートレース場を歩いている光景をカットに入れ、しまいには「オートと競艇行ってねぇと生きる張り合いがねぇじゃん!」という群馬県民のインタビューをテロップ付きで流している。

 当たり前の話だが、群馬県の中にはギャンブルをしない人もいれば、オートレース場に家族で行くなんてとんでもないという価値観の人もいる。しかし、それではエンタメ番組として成立しないので、視聴者のウケをとるために、意図的に「ギャンブルに熱くなっている人」や「怖そうな人」の映像ばかりをつないでいるのだ。

 石破首相の「群馬には怖い人がたくさんいそう」を「差別」だと追及したジャーナリストたちの目には、こういう「怖い人」を強調した番組をつくるテレビ局がどう映っているのかぜひ聞いてみたい。少なくとも、BPO(放送倫理・番組向上機構)には申し立てしなければいけないくらいの案件ではないか。

 また、石破首相が叩かれている「群馬の女性は強そう」というのも差別だということだが、ではこのようなけしからん差別を社会に広めたのは誰かというと、そこにはやはりマスコミの存在がある。

 例えば、「毎日新聞」では2017年9月13日、群馬県の女性進出について「かかあ天下というけれど… 参画率ワースト級なぜ」という記事を掲載して、こんな風に述べている。

《「かかあ天下」の代名詞で知られる群馬。かかあ天下と言えば、「夫を尻に敷く妻」と連想されがちだが、本来の由来は「働き者の妻」》

 このような記事を読めば、素直な読者は「なるほど、群馬の女性って昔から強いんだな」と思ってしまうだろう。石破首相の発言について、立憲民主党の野田佳彦代表は「群馬の女性が傷つくかもしれない」と苦言を呈したが、同じ理屈ならばこの記事も「同罪」である。毎日新聞社は速やかにこの記述を削除して、訂正していただきたい。