安定的な財源は年約2000億円で
年間事業費3700億円とは大きな開き
キャッシュフローの観点では、国の負担分(公共事業費)は約800億円、地方が半分の400億円で計約1200億円が年あたり入ってくる。これに加えてJR各社が支払う貸付料の合計が最大約800億円なので、安定的な財源としては計約2000億円となる。

ただし、工費は工事の進捗段階によって変わるため、年度ごとの全体の事業費をできる限りならした上で、将来の貸付料収入を担保にした借り入れで変動に対応している。また、既に将来の貸付料を一部で前借りしており、実際に充当できる貸付料はこれより少ないが、話を分かりやすくするため今回は考慮しないこととする。
以上の通り、事業費約3700億円に対して財源は約2000億円とあまりに開きがある。2039年度以降でようやくトントンであり、前借りの余裕はない。国と地方が現在の倍以上の公共事業費を払っても届かない。
ちなみに、当初の事業費で計算すると、北海道新幹線は2030年度までに平均約1500億円、北陸新幹線は2025年度から2039年度まで15年間で約1400億円、ピークが約2900億円なので、2031年度以降の貸付料を担保に借り入れれば十分賄える。事業費の増加はそれだけ影響が大きいのだ。
また、工期の延長は貸付料にも影響する。前述のように、貸付料は30年間の設定で、現時点では31年目以降の取り扱いは決まっていない。公費を投入した事業であるから、貸付料が無料になるとか、JRに施設を譲渡するといったことはなく、改めて31年目以降の貸付料を設定することになるだろう。

焦点は施設の大規模更新の扱いだ。JR東日本は東北、上越新幹線が開業50年を迎える2031年から2041年にかけて、総額1兆円規模の大規模改修を予定している。最初の整備新幹線である北陸新幹線高崎~長野間は2027年に開業30年を迎えるが、同様に50年目から改修費用が必要になると仮定すれば、31年目から50年目までの20年間は同水準の貸付料となるだろう。
しかし、その後の大規模改修を誰の負担でどのように進めるかは未定だ。JRに負担を求めれば受益が減少するため、貸付料が施設保有者の国(鉄道・運輸機構)が負担する場合は公的財源が減少する。
整備新幹線は2050年度以降、新規建設から維持更新へと新たなフェーズに突入する。敦賀~新大阪間の工期は最低25年なので、来年度中に着工できなければ2050年度に間に合わない。京都問題と財源問題を解決しなければ、先行きはますます暗くなる。
しかも、上記は最新の試算のうち、もっとも楽観的なシナリオである。さらなる事業費の膨張、工期の延長があれば、さらに厳しくなる。北陸新幹線延伸事業は重大な岐路を迎えている。