
2月24日付『「鉄道の信号機」もう不要?140年の歴史を変える「次世代信号システム」が革新的すぎた!』で取り上げた通り、今後の鉄道事業が持続可能性を高めるために不可欠なのが「無線式列車制御装置(CBTC = Communication Based Train Control)」だ。JR東日本は、CBTCの一形態とも言える独自の無線式列車制御システム「ATACS」をすでに一部路線に導入しており、さらに2028年以降の山手線・京浜東北線への導入に向けて準備を進めている。ATACSとはどのようなシステムなのか、同社に話を聞いた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
JR東日本が普及を進める
独自の無線式列車制御装置「ATACS」
「無線式列車制御装置(CBTC)」の詳細は前回取り上げたため省略するが、最大の長所は無線通信で走行位置を把握することで、レール上の列車を検知する「軌道回路」という設備が必要なくなることだ。軌道回路はざっくりとした位置しか分からないが、無線通信であれば詳細に把握できるため、さらに緻密(ちみつ)な制御が可能になる。
東京メトロ丸ノ内線が2024年11月にCBTCを導入したように今後、普及が期待されるシステムだが、そのトップランナーと言えるのがJR東日本だ。独自の無線式列車制御装置「ATACS(Advanced Train Administration and Communications System)」は2011年に仙石線、2017年に埼京線へ導入。続いて2028年以降の山手線・京浜東北線への導入に向けて準備を進めている。
ただATACSの真価はまだ十分に知られていない。どのようなシステムなのか、CBTCとは異なるのか。JR東日本鉄道事業本部モビリティ・サービス部門次世代輸送システム推進センターの馬場裕一所長にATACSのこれまでとこれからを聞いた。