良質なGTスポーツからマッチョなアスリートに変身!
すべての反応はクイック、サーキットで光る

 最初にプライベートサーキットでパフォーマンスを存分にテストした。MC20は戦闘的なレイアウト&パッケージをエレガントな衣装で覆い隠した、いわばスーパーモデルのようなマシンである。そのドライブフィールはGT風味が強く“まろやかさ”がウリだった。ところがGT2ストラダーレはまるで違う。マッチョなアスリートである。パフォーマンスは完全にリアルスーパースポーツの領域にあった。

 とにかくすべての反応がクイック。加速、コーナリング、減速、いずれもがドライバーの期待を上回って速く、しかもすべてが連動して提供されるから、ドライバーの意思がマシンの動きになかなか追いつけない。プロフェッショナルならきっと面白いように操ることができるはず。シロウト+αの“アラカンドライバー”では、どこのコーナーでも操作に遅れをとって悔しい思いをした。

 前輪の動きはとにかく正確で、状況把握がたやすい。一方、後輪はパワートレーンを背負ったドライバーと見事に一体となって、圧倒的な加速を演出する。試乗車にはトラックを攻めるのに必須のパフォーマンス・パック(前出のミシュランタイヤなど)が装着されていた。これにはカーボンコンポジットブレーキも含まれる。テスト車はサーキットで集中的に使用されていたようだが、ストッピングパワーは健全で、ハードな制動の繰り返しにも音を上げなかった。

 GT2ストラダーレは、どこからでも力強い加速をみせる。安全マージンをとって、一段上のギアで走っても速い。シャシー制御は優秀で、すべてを任せて曲がっていく勇気があれば、どこまでも速く旋回できそう。まさにトラックで総合力を楽しむマシンに仕上がっていた。

 一般道でも試す。さすがにソリッドで硬いライドフィールに終始する。だがカーボンボディのおかげで足がしっかりと自分の仕事をこなしてくれる。かなり高速なカントリーロードでもGT2ストラダーレにかかれば困難はまるでない。クルマのほうが力を持て余しているようにさえ思える。もちろん、速度を少し落としてクルージングすればいい。硬めのフラットライド感も慣れれば心地よく、スポーツシートを選べば日常使いに問題はなさそうだ。

 だが、そこはイタリア製サーキット志向マシンだ。もっと踏んでくれよと、終始ドライバーを煽ってくる。街中でその挑発に乗らず、冷静にクルーズさせることは至難の技だった。

(CAR and DRIVER編集部 報告/西川 淳 写真/Maserati)

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