成果を出したいなら、マルチタスクではなくシングルタスクを選ぶべきだ――そう提言している本がある。それは、18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術──限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』(デボラ・ザック著)だ。しかし、オフィスで働いていると周囲の人から話しかけられ、なかなか仕事に集中できないという人もいるのではないだろうか。そんな雑談が長い相手の話を終わらせる方法について、本書の内容をもとに解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

一点集中術Photo: Adobe Stock

集中したいときの雑談、どう断る?

 オフィスで仕事をしていると、何かと声をかけられるものだ。と言っても、多くは業務の相談や報告、予定の確認など、仕事に関わることだろう。

 しかし、中には、とくに用もないのに話しかけてきて、なかなか立ち去ろうとしない人もいる。

 意味のない雑談であっても、なかなか「後にしてください」とは言いづらく、「早く終わらないかなあ」と思いながら聞き流している人も多いのではないだろうか。

 隣にいて延々話をされると、業務に集中できない。いったいどうすれば良いのだろうか。

大事なのは、自分の意思をきっぱり伝えること

 著者のデボラ・ザック氏は、そんな無駄な雑談ばかりする相手には次のような対応をすることをすすめている。

・視線を上げ、「いま身動きできないんだよ」とはっきり告げ、また視線を下げる。
・にっこりと笑い、邪魔者を撃退するためにつけているヘッドフォンを指さし、いまは話ができないことをジェスチャーで示す。
・「そりゃいいね。でも、ちょっといまは仕事が山積みなんだ」と言い、仕事に戻る。
これ以外にも、あなたの仕事を邪魔してくる人間に対して言うべきことは、いろいろと思い浮かぶだろう。
あなたのやるべきことは、そんなせりふのどれかを躊躇せずに「言うだけ」だ。(P.142)

「そんなにストレートに断っても大丈夫なの?」と不安に感じる人もいるだろう。

 しかし、ザック氏は「もし、やんわりと伝えたいのであれば、あたたかい笑みや温和な表情とともに必要なセリフを言えば良い」と語る。

 たしかに最初は少し緊張するかもしれない。でも、職場で「仕事に集中したい」と伝えることに躊躇う必要はないのだ。

 複数の人が働く職場において、一つの作業に集中するための理想的な環境づくりをしてくれと、職場に要求するのは難しい。

 だからこそ、周囲にきちんと意思表示をすることで、集中できる環境を自分でつくり上げていかなければならないのだ。

相手の時間も大切にする電話対応とは

 同僚の雑談だけでなく、電話も集中力を途切れさせるものの一つだ。

 電話の場合、相手はこちらの状況など知るよしもないので、「集中したいのに!」というタイミングでかけてくることもある。

 その場合の解決方法について、ザック氏は「最初に、時間があまりないことを先方に伝える」ことを提案している。

 たとえば、次のような伝え方である。

「お電話くださり、ありがとうございます。あすのミーティングの打ち合わせをさせていただくのに、15分お時間を頂戴できれば幸いです」
そして残り時間が5分になったら、ていねいにそう知らせよう。
そうすれば15分という短い時間、通話だけに集中することができる。(P.114)

 中には、「そんなことをいちいち伝えなくても、電話なら相手からこちらの姿は見えないのだから、こっそり他のことをしていたらいいじゃないか」と思う人もいるかもしれない。

 しかし、ザック氏は「心あらずな状態で長時間、電話を続けるよりも、短時間、相手の話に100パーセント集中するほうがよほどいい。相手の話に完全に集中すれば、あなたが先方の時間を尊重していることは確実に伝わる」と指摘する。

自分でシングルタスクに集中できる環境づくりを

 人と接する時、相手に集中していなくても、なんとなく対応することは可能だ。

 しかし、その態度は相手に伝わる。

 であれば、雑談を断るにしろ、電話を切り上げるにしろ、きちんと相手に伝えることで、自分だけでなく相手の時間も大切にすることにつながるのだ。

 それに、他の作業をしながら上の空で話を聞いていても、相手の抱えている問題や要望にうまく応えることはできないだろう。

 それならば、時間を区切って対応に集中し、終わらせてしまう方が良いのだ。

 相手のペースに乗るのではなく、「いま、自分は何に集中すべきか」を考え対応する。

 一点集中術(シングルタスク)で結果を出すためにも、ぜひ意識してやってみてほしい。