「5年後にどうなりたい?」と言われても…部下を悩ませる上司の“問いかけ力”を劇的に向上させる法上司の「問いかけ力」が高くないと、部下は悩んでしまう(写真はイメージです) Photo:PIXTA

1on1をやると部下が
考え込んでしまうのは何故か

 前回は「メタコミュニケーション」をテーマに、特に1on1など日頃とは異なるコミュニケーションを取るときに有用な、コミュニケーションの目的を共有し同意を取るという、セットアップの方法をお伝えしました。今回は、セットアップの後、1on1を始めるときに必要な「部下自身で考えられるようになるための、問いを作る方法」についてお話ししましょう。

 1on1では、部下のキャリアビジョンがテーマになることが多々あります。しかしながら、「5年後にはどうなりたいと思っているの?」と問いかけても、活き活きと話し始める部下は少なく、考え込んで沈黙してしまうケースの方が多いのではないでしょうか。

 沈黙に耐え切れず、ついつい「自分のときはこうだった」と自分語りになってしまって、気づけば自分が9割話していたというのがよくある失敗パターンです。

 おそらく1on1で上司が目指していることの1つは、部下の主体性を高めるために部下自身に考えてもらい、たくさん話してもらうことでしょう。だからこそ上司は部下に問いかけるのですが、そのときの「問い」の巧拙が部下側の考えやすさ、答えやすさに直結しています。

 先ほど例に挙げた「5年後にはどうなりたいと思っているの?」という問いかけは部下の思考を促進するというより悩ませてしまうことになります。「答えにくい ≒ 悩ませてしまう」典型は抽象度の高い問いかけです。「幸せとは何か?」と「人は仕事においてどのような時に幸せを感じられるのか?」では、後者の方が具体性が高く、考えやすい問いかけになります。

「答えにくい ≒ 悩ませてしまう」典型の2つ目は、未来に向けた問いかけです。「昨日食べた食事で美味しかったのは?」と「今晩、何食べたい?」では、やはり後者の方が考える負荷が高くなります。前者が過去に向けられたものに対して、後者は未来に向けられたものだからです。