部下が「悩んで」いるとき、その状態を打破するために上司が取りがちな対応は、部下に対し
て「自分で考えてみなさい」とそのまま悩みモードを継続させてしまうか、端的にアドバイスをすることで問題は解決はするものの部下が成長しないという両極端のパターンです。第三の選択肢は、上司が部下を「考える」モードにシフトできるように「問いの力」でサポートすることです。

 たとえば、企画書の書き方で部下が悩んでいる場合を例にとってみましょう。「自分で考えなさい」というと、考えるのではなく悩んでしまい、作業が一向に進みません。しかし、上司が「こう書きなさい」というと部下が自分で考える能力は育ちません。

「部下にとって役立つ問い」か
「部下を悩ませる問い」なのか

 そんなとき、上司がゴールに近づくための適切な問いをたくさん提示できるとどうでしょうか。

「今回の資料は誰に読ませたいんだろう?」
「読ませたい人にどんな感想をもらえると、この資料はゴールを達成しているんだろうか?」
「想定する読者の前提知識は何だろう?」
「君が伝えたいことをとにかく箇条書きにしてみると、何がある?」
「なんでこれを伝えることが重要だと思うの?」

 部下はこうした問いかけを通じて、顧客想定の必要性や知識の前提条件を揃える考え方を学ぶはずです。もちろん1回きりでは難しいかもしれませんが、確実に部下の思考は進みますし、次回から上司に問われたことは、少なくとも考えられるようになるかもしれません。

 部下が自分の力で考えるということは、ゴールまでの「問い」を自分自身で立てられるようになることなのです。そしてそのためには、サンプルとなる「考えるのに役立つ問い」をたくさん上司から投げかけることが必要です。良い問いは、部下の中に必ずインストールされ、部下が自分で考える元になっていくはずです。

 今あなたが部下に投げかけている問いは、考えるのに役立つ問いでしょうか。それとも悩ませる問いでしょうか。

(株式会社コーチ・エィ 執行役員 村方 仁)