小牧で研究している
さまざまな自然災害対策

 報道公開では実際に試験盛土の散水装置を作動し、200ミリの大雨を再現したが、傘をさして中に入ってみるとやや強い雨という印象。実際、短時間で見ればもっと強い雨は珍しくないが、1時間以上にわたり降り続くことはほとんどないとのこと。

 新美氏によれば、一定以上の雨は土に染み込むより表面を外に流れていく量が多いため、長期的な影響を解析する上ではこれで十分だという。大量に散水しても水抜きパイプから排水されるのは何時間も後というから、降雨の影響は長期にわたることが分かるだろう。

 盛土の耐降雨性評価にあたってはコンピュータシミュレーションの活用が大きな役割を果たしたそうだが、試験盛土という実地があったからこそ実現した部分も大きかったのではないだろうか。

 小牧では他にもさまざまな自然災害対策が研究されている。例えばブレーキ総合試験装置は、レールにあたる円形の軌条輪と車輪を高速回転させ、最速時速350キロまでの走行状態を再現。冷水や雪を吹き込むことで、車輪が滑走しやすい環境を再現できる。

ブレーキ総合試験装置(台車試験装置)ブレーキ総合試験装置(台車試験装置)

 ブレーキ担当の小林学志氏によれば、零下20度で走行中に台車に吹き込む速度と同等の時速200キロで雪を噴射可能といい、さらに、雪質は東海道新幹線最大の豪雪地帯である関ケ原の含水量を再現しているという。また、台車に付着する雪の対策も研究しているそうだ。

 ブレーキ総合試験装置では、地震発生時に通常よりも強い制動力で働く地震ブレーキの研究も行っている。制動距離はブレーキディスクの改良により、1999年登場の700系から2020年登場の最新車両N700Sまでで30%以上短縮している。だが、制動力を強めると車輪の滑走が発生することから、試験装置で滑りやすい環境を再現することでさらなる短縮を目指している。