JR東海が開発を進める
水素エンジンハイブリッドシステム

 最後に見学したのは次世代技術の研究、水素エンジンだ。水素の動力化といえば燃料電池が注目されているが、JR東海は水素そのものを燃料とするエンジンで発電し、蓄電池と協調制御しながらモーターを駆動する水素エンジンハイブリッドシステムを開発中だ。

ディーゼルエンジンを改造した水素エンジンディーゼルエンジンを改造した水素エンジン

 報道公開で披露されたエンジンの音と振動は気動車のものと大差ない。というのも、このエンジンは既存のディーゼルエンジンを改造したものだからだ。未来感はないが、山間部を長距離走行するJR東海の在来線には、燃料電池より高出力かつ高負荷域の効率に優れ、内燃機関に由来する高耐久性を持つ水素エンジンが適しているとの判断だ。

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 今年10月以降、モーターを搭載した模擬車両と組み合わせた模擬走行試験を実施予定だが、課題も大きい。水素動力車両開発担当の加藤大博氏によれば、水素エンジンの出力は一般的な気動車の1両あたり300キロワットに対し、現状では100キロワットに留まるとして、さらなる高出力化を目指すとした。

 また、水素エンジンに決め打ちというわけではなく、低~中負荷域で高効率の燃料電池の研究も並行して進め、路線の特性にあった技術でカーボンニュートラル化を実現したいとしている。

 今回、撮影NGの箇所も多い秘密に包まれた研究施設の一端を見て、JR東海の安全に対する本気を再確認した。前述のように、JR東海の環境に特化した施設であり、研究内容であるが、これらの先進技術が鉄道業界全体に還元される日が来ることも期待したい。