脱線メカニズムの解明にも
活用している車両走行試験装置
さらに大規模な装置もある。車両走行試験装置は車体左右加振装置、台車加振装置などを実際の車体1両に接続し、走行中に受ける空気力やレールの凹凸など車体にかかる力を再現できる。車両走行試験装置担当の森下佳孝氏は、こうした施設は本線では実施できない過酷な試験を行えることに意義があると語る。

JR東海は2009年から脱線防止ガードの敷設、脱線時に車両の逸脱を防止するストッパの設置などを進めているが、車両走行試験装置は脱線メカニズムの解明にも活用されている。
現地では、実際の台車、車両を用いた試験における「片側の車輪がレールを大きく超えても反対側の脱線防止ガードにより線路内に戻る映像」や「脱線しながらも脱線防止ストッパが脱線防止ガードにひっかかり、姿勢を制御したまま停止する映像」を確認できた。
脱線防止ガードは現在、東海道新幹線全区間の8割に整備しており、2028年に全線へ設置を完了する計画だ。南海トラフ地震への対策が急がれる中であるが、脱線防止ガード担当の曽田祥信氏によると、脱線防止ガードが車両を受け止めるには枕木を強化する必要があり、枕木更新工事とあわせて進めているという。巨大設備の更新には相応の費用と手間がかかるのだ。
脱線防止はレールと車両だけでは完結しない。線路そのものが歪んでしまうと脱線防止ガードが有効に機能しないため、バラストの流出や盛土の沈下、高架橋の損傷などによるレールの変異を防止するための補強が進められている。
これらの補強工事は実物大の線路、高架橋を再現した構造物総合試験線で効果を検証する。ただ設置するだけでなく、起振機を設置して実際に高架橋を揺らすというから驚きだ。また、試験線は施工方法の検証にも使われるという。
