
フォルクスワーゲン「ID.Buzz」は、価格が800万円後半から900万円後半というセレブミニバンだ。しかし、幅広い層から支持を受けて初期受注は好調だという。トヨタ自動車の「アルファード」「ヴェルファイア」がほぼ独占してきた国内高級ミニバン市場に、大きな変化が生じそうだ。ユーザー向けイベントを取材して、その可能性を探った。(ジャーナリスト 桃田健史)
長さ5m×幅2mでも、購買層は大きくないと感じる?
実物はかなり大きい。
東京・六本木で開催された「フォルクスワーゲン・ブランド・エキジビション」で、新型EV(電気自動車)「ID.Buzz」を見て、そう感じた。
古き良き時代の独フォルクスワーゲン代表作であり、またID.Buzzのオマージュの原点である「Type2(タイプツー)」とイベント会場で見比べたことも、ID.Buzzの大きさ、いや存在感の大きさが強調された理由だろう。
「ゴルフ」「T-Cross」「ID.4」などフォルクスワーゲンのフルラインナップ実車に触れることができるフォルクスワーゲン ジャパン主催のイベントが全国主要三都市(東京〈6月21~22日〉、大阪〈7月4日~5日〉、名古屋〈7月12~13日〉)で開催される。初回地となった六本木ヒルズを訪れると、国内で唯一のEVミニバンであるID.Buzzに対する来場者の注目度は高かった。
言い方を変えれば、ID.Buzz見たさに来場した人が少なくなかった。
ID.Buzzには、二つのグレードがある。
「Pro」(888万9000円)は、全長4715m×全幅1985mm×全高1925mm、ホイールベースが2990mm。電池容量は84kWhで、満充電での航続距離は国際標準のWLTCモードで524kmだ。
「Pro ロングホイールベース」(997万9000円)は、ホイールベースが250mm伸びて3240mm。電池容量は91kWhで、WLTCモードが554km。
モーターの最大出力と最大トルクは両グレードともに210kW・560Nmである。
一般的にユーザーがEVの購入を検討する場合、重要視するポイントは大きく2つ。価格と航続距離だ。
その視点でID.Buzzを見れば、価格としてはセレブなEVであり、航続距離は日常生活では十分という見方となる。
だが、六本木ヒルズでID.Buzzと触れ合う人たちの様子を見たり、フォルクスワーゲンジャパン関係者らと意見交換したりしながら、「やはり、ID.Buzzは単純にEVの仲間ではなく、別物」という印象を持った。