社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

頭のいい人は知っている。「目標」が必要なとき、必要ないときPhoto: Adobe Stock

家を建てるときには、必ず完成図が必要か?

「やりたいこと」や「目標」が個人の人生に必要かどうかは、その人のタイプや価値観によりますが、一方で、目標が必要となる「場面」はあります。

どのような場合に目標が必要となるのか、整理しておきましょう。

目標の必要性を語る例え話に「家を建てるときに、完成図がないままスタートするのはありえない」というものがあります。

確かに、家を建てる際には設計図がなければ建築資材の調達もできませんし集まってくれた職人さん達も途方に暮れるでしょう。

しかし、子どもがダンボール箱を持ってきて「ぼくの家を作る!」と言い出した場合はどうでしょうか? おそらく多くの人は、完成図なしで始めることを何とも思わないでしょう。むしろ、子どもが「完成図がないから作れない」と言い出したら、「そんなことは気にせず、好きにやってごらん」と言うのではないでしょうか。

「本物の住宅」と「子どものダンボールハウス」の違い

この差が、目標が必要な場面とそうでない場面の違いを表しています。「本物の住宅」と「子どものダンボールハウス」は何が違うのでしょうか?

・失敗によるダメージ
本物の住宅は失敗のダメージが取り返しつかないほど大きいです。多大な金銭を失い、無駄になる建材の処理も大変です。お金だけでなく時間も無駄になり、精神的なダメージも大きくなりがちです。一方、ダンボールハウスは、原価もさほどかからず、不要になったら簡単に処分できます。

・目的の違い
住宅はその家に快適に住むことを目指して造られます。「家は傾いておりますが、これも経験です! 他の人にはできない体験です!」と言われたら、施主は激怒するでしょう。一方、ダンボールハウスは作る過程そのものも目的の1つです。屋根がずれていたり、窓がいびつだったりしても、そこまでの創意工夫に意味があります。

・関わる人の数
住宅は、設計、調査、工事等々、それぞれの過程で多くの工程があり、様々な人が建築に関わります。一方、ダンボールハウスは1人、もしくは多くても数人です。

つまり、目標が必要となる場面について、次の基準を考えることができます。

・失敗によるダメージが取り返しつかないほど大きい場合
・過程より結果を重視する場合
・多くの人が関わる場合

これらのうちの1つでも該当するプロジェクトに取り組む場合は、明確な目標を設定したほうがスムーズに進みます。

人生において目標を必要としないタイプの人でも、このような場面では、その場のための目標を作ることを意識するといいでしょう。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。