ジムで感じた異変
ある日、いつものようにジムで筋トレをしていたときのこと。
その日は、ルーティンとして「腕を鍛える日」だったので、ダンベルを持ち上げようとしたのですが、ふと手が止まり、じっと固まってしまいました。
「このままじゃ何かまずい」と自分の異変を感じ、ダンベルを置いてそのまま帰ってしまいました。
診察中に言葉が出てこない
さらなる異変は、クリニックでの診察中に起こりました。患者さんと話していると、いくつか質問をした後に、次の言葉が出てこなくなったのです。
患者さんの数が増えて忙しくなっていた時期だったのに、思考が止まりかけてしまう感覚があり、「これはおかしい」と思いました。
鏡に映った“無表情な自分”
そしてある日、鏡を見たとき、自分の目の周りが真っ黒に感じられ、表情がまるで抜け落ちているようでした。
「これはもう治療が必要だ」と思い、信頼している精神科医のもとを受診したところ、やはりうつ病との診断を受けました。
感情が“抜ける”という感覚
うつ病の特徴の一つとして、「楽しい」「うれしい」「充実している」といった感情が、スコーンと抜け落ちるような感覚があります。
私の場合もまさにそうでした。「つまらない」とか「楽しくない」とはまた違って、感情そのものが感じられなくなるのです。
早朝覚醒と無力感
また、朝3時や4時といった早い時間帯に目が覚めてしまい、再び眠れなくなる「早朝覚醒」も現れました。
これはうつ病に特有の睡眠障害とされており、私自身もまさにそれを経験しました。
脳の一部が止まっているような感覚
うつ病は、単に気分が落ち込む病気ではありません。私自身の体験としては、脳の一部がうまく働かなくなったような感覚でした。
ストレスで行きたくないとか、気分が沈むといったものとは違い、「機能の停止」に近い印象だったのです。
経験から伝えたい兆候
今回は私の個人的な経験をお話ししましたが、特に注意してほしいのは以下の点です。
❷ 睡眠の質が極端に悪化する(早朝覚醒など)
➌ 仕事や趣味の最中に突然「無」の感覚に襲われる
➍ 感情が消えてしまうような違和感
これらの兆候がある場合は、早めに自分を労わることが大切ですし、精神科を受診してみることをオススメします。
忙しさの後に来る“空白”に注意
何より大切なのは、「うつ病は忙しさの最中ではなく、落ち着いたときに現れやすい」ということです。
私自身も、寂しさを紛らわすためにノーブレーキで走り続けた結果、心が追いつかなくなってしまったのだと、今では感じています。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。