東日本大震災のとき、ITインフラの復旧は遅れた
GovTech東京のエグゼクティブアドバイザーに就任した及川卓也氏も、井原氏に共鳴する経験があったと話す。
2011年3月11日の東日本大震災。「日本のインフラ復旧能力はすごかった。あれほど甚大な被害を受けながら、電気、ガス、水道、道路など多くのインフラが短期間で持ち直した。一方で、数多くの基地局が停止して携帯電話がつながらず、復旧に時間を要した。我々IT業界の人間は、ITが社会のインフラの一つになっているはずだと思っていたのに、そこが遅れていた」(及川氏)
及川氏は、企業の枠を超えたエンジニアコミュニティ「Hack for Japan」を形成し、東北の支援に動いた。必然的に行政のデジタル化の必要性も考えるようになった。14年の時を経て、その最前線に立つ。

外注依存には4つの弊害がある
なぜ内製化が必要なのか。及川氏は、外部委託に依存するデメリットを4つ挙げる。
(1)スピード不足
今は高度経済成長期のように、足りないものを作れば売れる時代ではない。「お客さんが欲しいと言っているものを作っても、実際には求められていなかったということがよくある」と及川氏。そのため潜在的なニーズを探り当て、高速で仮説検証を繰り返していく必要がある。
「デザイナーとエンジニアが机を並べていれば、新しいUIのA/Bテストも1週間でできる。しかし外部委託なら3カ月はかかる。年4回しか検証できないのでは勝負にならない」