豊洲市場、スマートポール……東京都の内製開発を3つ紹介

 東京都では実際に内製開発が始まっている。中でも特徴的な事例が3つ紹介された。

【事例1】現場職員が自ら改善し続ける、豊洲市場の衛生管理システム

 亀山鉄生氏(GovTech東京 テクノロジー本部長)が手がけた豊洲市場の衛生管理システムは、内製化の価値を象徴する事例だ。

GovTech東京 テクノロジー本部長 亀山鉄生氏 Photo by M.SGovTech東京 テクノロジー本部長 亀山鉄生氏 Photo by M.S.

 従来、豊洲市場の水産物衛生監視は紙とペンで行われ、事務所に戻ってからデータを手入力していたという。亀山氏は現場に入って1~2週間で衛生管理システムのプロトタイプを開発。ただ、業務理解が不十分だと感じていたので「まずは使ってもらおう」と中卸業者に協力を依頼し、そのフィードバックをもとに、ノーコード/ローコードツールを活用してアジャイルに仕上げていった。

 このアプリは現在、現場の職員の手で改善が続けられている。ノーコード/ローコードツールを用いたのも、それを見越してのことだろうか。外部委託では、ここまで継続的な改善サイクルは育まれなかったかもしれない。


【事例2】OpenAI、Claude、Geminiが使える、全自治体共有AI基盤をスピード展開

 東京都職員と区市町村向けの生成AIプラットフォームは、既存の技術を効果的に組み合わせた内製化の事例だ。

 各自治体が従来のプロセスで生成AIを導入していては、契約手続きなどスピード感に欠ける。そこで、GovTech東京が東京都デジタルサービス局と連携し、独自の生成AIプラットフォームを構築した。

 このプラットフォームのメリットは大きく三つある。第一に、行政文書などの機密データを外部のLLMサービスに学習されることなく利用できる。第二に、OpenAI、Gemini、Claudeなど複数のLLMをGovTech東京が一括管理し、各自治体が独立したワークスペースでAIアプリをノーコード開発できる。第三に、作成したAIアプリは他の自治体と共有でき、再利用可能なデジタル公共財となり得る。

「比較的新しいバージョンのLLMをスピーディに届けられ、切り替えも簡単にできる。AIを身近に感じていただき、業務に活用しやすくしたい」(亀山氏)