2024年3月にも高額の相続税の脱税が発覚した。名古屋市在住の被相続人の妻とその長男、次男の3人が、相続財産から現金5億5300万円を除外する方法で、相続税約2億7000万円を免れた疑いで名古屋国税局から告発されている。

 これらの事例が示す通り、相続税の脱税は単なる行政処分に留まらず、司法の場で裁かれる可能性もある。隠蔽された財産が巨額であればあるほど、その末路は厳しいものになりやすい。執行猶予であっても前科はついてしまうため、社会的信用を失うおそれもあるのだ。

相続税の脱税による
主なペナルティとは

 相続税の脱税に安易な気持ちで手を出してしまうと、その代償は想像以上に大きく、金銭的なペナルティに留まらず、社会的な信用の失墜、さらには刑事罰によって自由を奪われる可能性まである。では、実際に受けるペナルティの内容とはどのようなものか。

 まず知っておきたいのは刑事罰である。相続税の脱税は「相続税法違反」という立派な犯罪行為であり、悪質と判断された場合、刑事罰が科せられることがある。偽りその他不正の行為により相続税を免れた場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性がある。

 懲役刑と併科されることもあるのは「罰金刑」だ。脱税額に応じた高額な罰金が科せられる。罰金も納付できない場合は、労役場に留置されるリスクもある。さらに、脱税が発覚すると免れた税金に加えて、重いペナルティとしての「追徴課税」が課される。無申告加算税や過少申告加算税、悪質な脱税には最も重いペナルティである重加算税が待ち受けている。

 納めるべき税金を期限までに納付しなかった場合には延滞税も発生するため、最終的に支払う金額は脱税をせずに適正に申告した場合の何倍にも膨れ上がるおそれがある。

「海外に財産を移せば税務署に見つからないだろう」と考える方もいるが、それは大きな誤解だ。2017年には各国の金融口座情報が自動的に交換されるCRS(共通報告基準)を日本も導入を開始しており、海外の銀行口座に隠された財産も容易に把握できるようになった。租税条約などに基づく情報交換も行われており国際的な連携が構築されている。