「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

「何か、話したいことはない?」は良くない質問
みなさんは、上司と面談をすることがあるでしょうか。1on1を普段からやっているという人や、定期的に面談がある人、職場の規則でやらないといけない人など、さまざまな人がいるかもしれませんね。その時には「イヤイヤだけど話している」という人も多いかもしれませんね。
その時に、次のような言い方で、面談を進めてしまっている人もいるのではないでしょうか。
これは実は、良くない質問になる可能性の高い聞き方です。自分と相手との間に、「会話のねじれ」が起きてしまい、「何度も話しているのに、一向に仲が深まらない」ことにもつながりかねません。
今回はその理由について、考えていきましょう。
「聞きたいこと」を無理やり作らせる
たとえば、ここで部下の気持ちになって想像してみましょう。あなたが部下だとして、「上司との30分、1on1で話す時間」は、どのような時間でしょうか?
「楽しみ!」という人も中にはいるかもしれませんが、中には、「正直、面倒…」とか、「実は、苦手、イヤだ」という人もいるかもしれませんね。
そんなとき、あまりそりが合わない上司にとひょんなことで面談をすることになったとします。ここで、先ほどのように「何か、話したいことがある?」と言われたら、あなたはどう答えるでしょうか。
「別にありません」と答えたいところかもしれませんが、とても、そう答えるわけにもいきませんよね。上司が時間を作ってくれているわけですから、「何かお土産を持たせないといけない」と考えるでしょう。具体的な回答としては、「取引先のことで悩んでいて…」「今トラブルを抱えていて…」のようになるでしょう。
ここで今、重大な問題が起きたことに、皆さんはお気づきでしょうか。
「会話のねじれ」が信頼関係を損ねる
ここで起きたのが「会話のねじれ」です。
考えてみてください。上司から見ると、「面談を設定したら部下が悩みを話してくれた」ように見えているかもしれませんが、実際に起きているのは、「部下が上司に『忖度』をして、それらしい回答をした」に過ぎないのです。
上司からすると「自分は部下に寄り添っているいい上司だなぁ」と感じるかもしれませんね。しかし部下からすると、「しょうがないから悩みっぽいものを持ち出した」だけで、本当にそれが悩みだったとは限らないのです。
この一回だけなら大した問題は起きないかもしれませんが、こうしたズレたコミュニケーションが続いていった後、部下と上司の信頼関係は築かれていくでしょうか。甚だ疑問ですね。
このように、会話自体が成立していても、その実「コミュニケーションがズレている」ことは、職場だけでなく、家庭、プライベートでもよく起きています。
人間関係の基礎には、コミュニケーションがあります。そしてその始まりはいつも、「質問」です。良い人間関係の基礎には、良い質問があるのです。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです)