この自動車メーカーの従業員は、たとえ医療費が1000万円、2000万円と高額になっていっても、自己負担額が2万円を超えることはない。付加給付のない協会けんぽや国民健康保険の加入者に比べると、医療費の負担は各段に抑えられる。
こうした手厚い付加給付がある健保組合の加入者は、24年末から話題となっている高額療養費の引き上げ問題も無関係で、法定給付が見直されても彼らの医療費の自己負担が増えることはない。付加給付のある健保組合に加入している人は、医療費面では勝ち組といえるだろう。
傷病手当金や出産手当金
埋葬料にもお得な上乗せがある
付加給付は高額療養費だけにとどまらず、傷病手当金や出産手当金、出産育児一時金などの上乗せをしている組合もある。
・傷病手当金
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んで、給与がもらえなかったり、減額されたりした場合の休業中の所得を補償するための給付だ。法定給付では、1日あたりの給付額が標準報酬日額(日給)の3分の2で、給付日数は通算で1年6カ月となっている。
ところが、日給の80%を最長3年間支給するといった付加給付を行っている健保組合もある。傷病手当金への付加給付があれば、療養期間が長引いても安心だ。
・出産育児一時金
妊娠・出産は疾病ではないという理由により、現在は正常分娩には現物給付が行われていない(26年を目途に保険適用を検討中)。その代わり、健康保険の被保険者やその家族が出産した場合は、出産育児一時金が現金給付されている。2023年4月以降の出産の場合、法律で決められた給付額は子ども1人につき原則的に50万円だが、出版系の健保組合では標準報酬月額(月収)の半額程度を上乗せして給付している。
・埋葬料
埋葬料は健康保険の加入者が死亡した時に、残された家族に支払われる現金給付だ。埋葬料を受け取る権利のある遺族がいない場合は、実際に埋葬手続きを行った人に埋葬費として給付される。法定給付は5万円だが、これに15万円程度の上乗せをしている健保組合もある。
この他にも、不妊治療に関する費用や入院時の差額ベッド料を補助する付加給付を行っている健保組合もあり、これらの給付がある健保組合の加入者は医療費の負担を大きく軽減できるのだ。