【変化要因3】
団塊ジュニアの引退
さて、賃上げの分野での話題と言うと、実は正社員の新卒給料が爆上がりしていることも話題です。これも要因1と同じメカニズムで、大企業は新入社員の給料を高く設定しなければ売り手市場の就職戦線で人材を確保できない状況に追い込まれています。
こういった需給の変化のあおりを受けているのが就職氷河期世代です。新卒の給料を上げるためにはあまり成長できていない大企業の場合は財源が必要で、わかりやすい財源としては中高年の昇給率を削るといったことが起きています。
とはいえ昇給率を削ったとしても中高年社員の人件費は合計すれば割高で、そういった企業では経営の負担になっていることは事実です。それが急激に緩和されるのが60代になったときの再雇用です。実際、私の世代がいまそのタイミングに来ていて、多くの仲間が「同じ仕事を半分以下の給料でこなす」という新しい働き方に移行しています。
さきほど50代の人口を合計すると1836万人だと言いました。これからの10年間で、この人口がつぎつぎと嘱託への切り替えへと移行します。この世代の人口は若者世代の1.5倍もありますから、そこで削った人件費は社会全体で見れば大きな財源となります。
ではその財源はどこに使うのが一番いいのか?若いアルバイトパートの時給競争に勝つための原資として使うのが、成長分野にいる大手チェーンストアにとっては一番良い投資先になるのではないでしょうか。
こういったチェーンストアビジネスは中小企業にとっても無縁ではありません。実際、私が知っている中小企業のいくつかは経営安定のために本業とは別に大手チェーンのフランチャイズを始めています。場合によっては本社で働くパート社員よりも、フランチャイズのパート従業員の募集条件の方がはるかに時給が高いといった逆転現象も起きるでしょう。