このように若い人を採用しようとしても母集団の数が以前の2割〜3割も減っているのですから、数字を見れば、若者を採用するのが難しいのは当然と言えるでしょう。

 一方でしまむらやユニクロといったチェーンストアのビジネスモデルは、若者が潤沢に採用できた1980年代から1990年代に確立したものです。

 そのチェーンストアのビジネスの根底にある考え方は、「売れるフォーマットのビジネスモデルが確立できれば、あとは出店すればするだけ企業が成長できる」というものです。

 ユニクロもセブンイレブンもコメダ珈琲も焼肉きんぐも、一度ヒットするお店が完成すれば、あとは日本国内に白地がなくなるまで店舗拡大していくことが理論上は可能でした。

 しかしこの理論が成り立った1980年代と現代、つまり2020年代でひとつだけ違う前提があります。それは若い労働力の奪い合いです。実際は20代だけでなく30代、そして40代の労働力をチェーンストアが取り合っているのですが、その母数が減っているのです。

 ではどうすればいいのでしょうか?成功しているチェーンストアの場合、店舗を出せば出すほど儲かるのであれば、パートの給料を上げるか、それとも店を出さないかの二択のトレードオフ(どちらかしか選べないという二律背反のこと)になります。

 経営者にとって、この二択の判断は明白でしょう。

「採用競争でぶつかる相手よりもパートの給料を上げればいい」

 しまむらはハニーズよりもパート給料を上げればいいし、まいばすけっとはドン・キホーテよりもパート給料を上げればいい。

 この構造は市井の小さな飲食店でも同じ経営判断が起きています。ある個人経営の人気ラーメン店がバイトの時給をそれまでの1000円近辺から2000円にしたことがあります。結果起きたことはふたつあって、どうしても採れなかったバイトがすぐに埋まったことと、その後、従業員が辞めなくなったので採用活動が不要になったといいます。