「採用競争でぶつかる相手よりもパートの給料を上げればいい」

 ジーユーはハニーズよりもパート給料を上げればいいし、まいばすけっとはドン・キホーテよりもパート給料を上げればいい。

 この構造は市井の小さな飲食店でも同じ経営判断が起きています。ある個人経営の人気ラーメン店がバイト時給をそれまでの1000円近辺から2000円にしたことがあります。結果起きたことはふたつあって、どうしても採れなかったバイトがすぐに埋まったことと、その後、従業員が辞めなくなったので採用活動が不要になったといいます。

 時給を上げられない中小零細企業が多い中で、残酷な話ではあるのですが、賃金を上げれば上げるほど儲かる会社が存在しています。そのような会社中心にパート時給が上がり始めているのです。

【変化要因2】
年収の壁撤廃

 前回の衆議院議員選挙で政権が少数与党となったことで、野党との協議が行われるようになり、年収のふたつの壁が大きく動きました。

 ひとつは103万円の所得税非課税の壁で、国民民主党が主張していた水準への変更は実現できませんでしたが、160万円が新しい壁になることが決まりました。雇用主にとっては良い変化です。それまで扶養控除を受けるために最低賃金の1000円近辺で年間1000時間しか働いてくれなかったパート従業員が、これからは1.6倍の時間、シフトを入れてくれるようになるからです。

 ただもうひとつ国会で可決されてしまったのが106万円の壁の撤廃で、これは実はパートで働く人にとっては打撃が大きい制度変更だといわれています。

 というのも3年以内に実施される106万円の壁撤廃で、多くのパート従業員がこれまで入らなくてもよかった厚生年金に入らなければならなくなるのです。年金は遠い将来に戻ってくるとはいえ、当面の給料からそれなりの金額が天引きされます。最近はこの社会保険料の値上げが庶民の給料の手取りを下げている大きな要因のひとつになっています。手取りが少ないパート従業員にとっても打撃です。